るーむ私記

プライベーーートなブログです

【感想】BARステラアビス:酒と共に仲間の心を解きほぐす優しい良作。BGMが最高!とはいえ作業感は否めない

聖域クリア、全員のキズナレベル最大、新醒界は未クリア。

プレイ時間は1回目(ラスボス直前で断念)が90時間、ストーリーを飛ばしつつクリアした2回目は40時間程度。通常のプレイであれば50時間前後だと思う。

バーの雰囲気をかき立てるBGMは最高の一言で、相席して飲みながら関係を深めるストーリーもかなり心地良いもの。

反面、ゲームパートは作業感が強く体感以上にプレイ時間がかかる印象。緩和できる方策があればとは思うけど、現実的に厳しい気もする。

個人的には周回要素があるのにセーブデータを分けられない・かなりマメなオートセーブはマイナス寄り。その他UIにもいくつか不満がある。

コンセプトが好きでローグライクRPGが嫌いじゃなければ遊んでいいんじゃない?という感じ。お勧めはしないけど私は好き。

以下ネタバレあり。

ストーリー:道徳的正しさに進む善性強めの物語

顔と片腕を失い、バーに閉じ込められたサマヨイが、顔と片腕を取り戻すためにヨイの世界を探索する話。

サマヨイとの交流を通して心の歪みと向き合い、前に進めるようになる流れはメイン・キズナストーリー両方に共通。

中盤のフックとして提示される情報は重さや暗さが強く、鬱病・統合失調症・正義厨・セックス依存など、ゲームキャラクターの悩みとしてはあまり見ない要素が出てくるので嬉しい。中盤以降は軒並み道徳的に正しい方向に進む話なので若干飽きるものの、話としてはまとまりがあるしフックも強くて良い感じ。

それはそうと、終盤のキズナストーリーでサマヨイが褒められすぎていて居心地が悪かった。

サマヨイのおかげで彼らが助けられたのは事実だし嘘でも誇張でもないとはいえ、終盤に発生する3人での相席ストーリーでは「あなた(私)もサマヨイさんに救われた~」という話が中心になり、褒め殺しに遭って居心地が悪い。

プレイヤーがサマヨイに感情移入していれば褒められて嬉しい&ここまで相席を頑張った達成感が出たと思うんだけど、私はそういう気持ちにならなかった。

本作の開発会社である日本一ソフトウェアの作品だと、ディスガイア5の中盤~終盤でも似たような感想を持った。作品を通して語りたいテーマが直接的かつ平易な言葉で出てくるから戸惑う、みたいなことかもしれない。

とはいえ私の好みから外れるだけで、ストーリーとして何か問題があるわけではない。強めのフックを持たせつつ、意外と素直なことをやっているのも本作の魅力だと思う。

バー:カクテルツリーを開ける快感が強い!相席システムもかなり楽しい

バーでの移動は左右に限られるぶん、見た目の美しさに振っている。

ほとんど背景に溶け込んだマスターも美しく、カクテル類は見ているだけでも楽しい。

特にカクテルツリーを解放するのはそれだけで楽しく、飲んだことのないカクテルを漫然と飲むのも面白い。

個人的には水割り系のビジュアルがかなり好みで、ちゃんとアルコールに水を混ぜた時のもったりした質感が出ている!!と感動した。ジンの水割りが分かりやすくて、アルコールを口にした時の独特の唇に密着する口触りを思い出してうっとりした。

本作は相席システムがあり、相席し、会話を盛り上げる(途中から盛り下げる)ことでキズナレベルが解放される。

相手が飲んでいるお酒も見えるし、飲み方からも性格が分かって楽しい。

会話も、序盤はとりあえずノリを合わせる→関係が深まって問題が見えてきたら盛り下がってでも否定 と、人間関係の深め方の表現が面白い。画一的ではあるものの、人間と向き合った結果そうなってしまう、みたいな話だと解釈した。

BGM:かなり良い!言うことなしの名曲揃い

普段はあまりBGMに言及しないんだけど、ステラアビスはマジでBGMが全部良い!!

バーの雰囲気に合うシックな曲が多めながら、各醒界のBGMはちょっと癖もあってハマる。個人的には断罪場のBGMがストレスのかかる感じで結構好き。

好き、としか言えないので言うことがそんなにない。カクテル注文時の氷の音も綺麗で良いよね~。

キャラクター:欠点が魅力に感じられる造形。カジさんが好きです

一番好きなのはカジさん、次点でキルカ。特別嫌いなキャラはいない。

一応王道に寄せすぎない工夫として、一部の登場人物が明確に加害者として描かれていることがある。

マイア・カジあたりが該当で、最終的に全員が更生してマイアにも償いの意思は出るものの、罪と罰の帳尻が合わないと感じてイヤになる方はいるかも。

私はかなり好き。加害の罪は消えなくて、適切な罰を受けられるかも分からないまま、それでも心の歪みと向き合って生きていく彼らのこれからに思いを馳せている。

グラフィック:ギャップのある立ち絵、ミュシャ風のステラなど評価高め

立ち絵は可愛い寄り、背景やカクテルイラストは煌びやかな雰囲気を持ち、ステライラストはミュシャ風と雰囲気の異なるイラスト群だけど、全てゲームとマッチしていて好印象。テイストの異なるイラストが同一画面上に表示されることがほとんどないのでミスマッチが起きていないんだと思う。

立ち絵は通常の姿と豹変した姿のバリエーションがあり、明るかったジンガさんが無の表情になる、穏やかなレオナさんが牙をむいて怒るなど、ギャップがあってかなり楽しい。

バトル中の3Dグラフィックは手足と頭が大きい低頭身キャラ。めちゃくちゃ美麗!ってわけではなく若干の粗はあるものの、ぽってり可愛い印象なのでそこもチャーミングに見える。

グラフィックにおおむね問題はないのだけど、ステラの消費MPの表示時に「/」を使わないでほしかった。

右上の「MP/0」が「MP10」にも見える

悪い意味で馴染んでいて斜体の1にも見える。/を無くす、またはフォントを変えて/と1の誤認が起こりにくいようにして欲しかったところはある。

ゲーム:セーブ周りに不満あり、作業感が強くなんとかしてほしかった

ローグライクRPGで、ダンジョン(醒界)をクリアするごとにレベルはリセット、アイテムやお金は蓄積されるけどゲームオーバーになると失われる。

ローグライク的なルートやステラの選択の楽しさはあり、ステラ構成がうまくいって雑魚を1ターンで処理できた時の快感はある。

とはいえ私の適性の低さもあってストレスは大きかった。一言でまとめると「作業感が強かった」ことが問題で、具体的にどこが良くなかったかの話をします。

問題点1:終盤の退屈さがすごい

特に断罪場・聖域の話。

本作の楽しさってランダム登場のステラをもとに、探索しながらステラ構築を考えるところにあると思うんだけど、終盤になるにつれランダム要素が減っていく。

断罪場はキズナレベル6以上の仲間1名を連れて行くので、誰が来てくれるかを自分でコントロールできる。さらにサマヨイ+仲間1名なのでステラの必要数も絞られる。そのわりに階層数が長いため、最終階層に到達する頃には欲しいステラがおおかた手に入っていて、あとはレベルを上げるだけ、みたいな状況に陥りやすい。

最初はアンコントローラブルだったゲームシステムが、ゲーム内の要素解放とプレイヤーの習熟でコントロール可能になる流れは一般的だとは思うものの、そこまでやっても結局レベル上げは手動でやらなければいけないところに退屈感がある。

全体的にスピード感がないのが問題なので、スピード感が出る方向で調整があった方が良かったのかも。具体的には1ターンで撃破できた敵は戦闘なしで勝利扱いにするとか。

あとプレイ中は何とも思っていなかったけど、草刈りもやらない理由が特にない(エナジー若干減るんだっけ?)ので、草むらに突入したら自動で草刈りできるようにしても良かったんじゃないか?草刈りついでに敵の先制を取るのもそれはそれで面白かったし微妙なところだけど、草刈り自動くらいのスピード感はあっても良かった気がしてきた。

問題点2:ゲーム下手の救済要素がない

これはゲームが下手な私側の問題ではある!けどプレイしていて困ったから書いておく!

本作はサマヨイが撃破されるとゲームオーバー扱いになり、その時点での所持アイテムとお金が失われる。探索進捗もリセットされるので、また1から探索を始める必要がある。

普通のローグライクではあるんだけど、ゲームが下手だと戦う→負ける→アイテムを失う→アイテムがないから勝てない の悪循環に陥る。

もちろんそうならないように勝て、大事なアイテムは保管箱にしまっとけ、プレイヤー自身に蓄積された知識を使えという話ではあるんだけど、甘えた懶惰プレイヤーとしては救済措置が欲しかったのも本音ではある。

というかこれ、難易度が選べないことが原因な気がする。敗北してもアイテムを失わないイージーモードが欲しかった。

問題点3:きめ細かすぎるオートセーブ、分けられないセーブデータ

本作のセーブスロットは3個で、一度ゲームを始めたらスロットにゲームをひたすら上書きしていくことになる。データの削除はできるけど、別スロットに複製することは出来ない。

オートセーブはきめ細かで、階層を進んだ・マップを切り替えた・戦闘が始まった・戦闘が終わった・バーに戻った・相席を終えたタイミングでオートセーブが入る。一応カウンター席で手動セーブは出来るけど、特別な縛りでなく手動セーブ無しでのゲームクリアも余裕。

オートセーブが頻繁なのは親切で良いっちゃ良いんだけど、本作についてはそうとも言い切れない。

上述の通り私がゲーム下手だったことにも関連して、雑魚戦で敗北することが何度かあった。

その場合、ゲームオーバーの演出が終わる(ゲームオーバー時のオートセーブが終わるまで)にゲームを強制終了して再開すれば、敗北した戦闘を再開できる。

ただ、たとえば「HPが極端に少ない状態で不意打ちを食らい、なすすべなく負けるしかない」みたいな状況で戦闘が始まっても戦闘開始時にオートセーブが入るのは歯痒いところもある。フロア移動した時にオートセーブでも良かった気はする……というか私はその方が良かった。

上述の件はゲームが下手な私が悪い部分もあるんだけど、セーブスロットの異常な少なさと複製不能はあまり良くなかった。

本作は断罪場での仲間が終盤の戦闘での相棒になる。私はここを読み違えてしまったせいでラスボス直前でセーブデータを破棄して最初から始めるハメになってしまい、断罪場直前でセーブデータを取っておけば……!とかなり悔しかった。

私みたいな愚か者がどのくらいいるかは分からないけど、単純に全員の断罪場~ラスボス戦の展開が見たいプレイヤーは結構いる気がする。断罪場手前でセーブデータを取っておけたら全員分見る手間も少なくて良かったんじゃないだろうか。

とはいえ、製作側としてプレイヤーの選択に重みづけをしたい気持ちも分からなくはない。全員分見ることのハードルを上げたい(ゲームデータを網羅させない)考えなんだとは思うけど、本作の理念と噛み合っていないので良い印象がなかった。

 

問題点4:理念と噛み合わないゲームシステム

上記に関連して、本作のシナリオ上の理念とゲームシステムの噛み合いが微妙だった。

ゲーム的な話をすると、断罪場で一人を選んで、ラスボス戦はその一人+マスターと共に戦いに出る。一応バーに他キャラもいるけど、断罪場で選んだキャラがプレイヤーにとって特別な印象になる。

ただ、相席イベントでは終盤になるにつれて3人での相席が発生するようになり、サマヨイが各々の心の問題を解決したことで常連たちがもっと仲良くなったことが示される。

ゲームでは「特別な一人」が出来るのに、サブシナリオは「みんな仲良く」の方向性になっていて、ゲームとシナリオでプレイヤーに向けるメッセージ性が噛み合っていないのはかなり気になった。

大事な一人を選ばせる話でも、みんなで仲良く大団円でもどっちでもいいんですよ。ただ、どっちかではあるべきじゃないんですか?というのは疑問に思った。

個人的にはゲーム要素に不満が強いのもあり、シナリオ側の発する「みんな仲良く」のメッセージで統一感を持たせたかったところはある。ラストバトルはキズナレベル6以上のキャラが集結して助けてくれる演出があるような露骨な絆描写を入れても良いような作品だと思う。星座って星の集まりだし、そういう意味でもマッチした気はする。

 

まとめ:歯ごたえ強めRPGとして良作、作業感をどう乗りこなすかが課題

思ったより時間を食われたのもあり、作業ゲーだったな……とぐったりする気持ちが強い。

とはいえシナリオは良い話だしバー・カクテルの美しい描写には心奪われたし、体験版で印象の良かった部分は最後まで楽しかった。

体験版を触ってみて好感触ならお勧め。