プレイ時間はおそらく4時間程度、ボイスありのキャラクターは1人なのでフルボイスでもそんなに負担はない。オート速度も細かく調整できるので快適。
世界観設定は詳しく語られることもなくぶん投げてはいるものの、主題は主人公(鏡夜)とアサギリが交友を深めることでそっちはバッチリ。行きましょう→逝きましょう→生きましょうと物語が移ろうのも美しくて良かった。
選択肢ナシのノベルゲーム・ポストアポカリプスが好きなら是非プレイして欲しい。
画像・文章ともにグロ描写は多少ある。グロい側面を押し出したような描写はほぼないけど、一部かなりギョッとするイラストがあるのでそこだけ注意が必要。
以下ネタバレあり感想。)
クラウドファンディングの時からずっと楽しみにしていたけど遂に! 発売されましたね!!
ウォーターフェニックスのゲームは最悪なる災厄人間に捧ぐ、アーキタイプ・アーカディアのイメージがありプレイ時間が長いかと思っていたけど、公式ブログでプレイ時間3~5時間とあったのでサクっと遊べて良かった。
●グラフィック
クラウドファンディングでイラストの描き直しがあるとは聞いていた通り、グラはだいぶ綺麗。
↑前髪が長い状態のアサギリ。
今プレイしているアーキタイプ・アーカディアでも思っていることだけど、なんかツヤの描きこみが大きく変わった印象があってアサギリの魅力が増した気がする。
2015年発売時のイラストと比べるとかなり良くなっていてそこは嬉しい。
アサギリの外見(長い白髪の少女・シンプルなワンピース)はアーキタイプ・アーカディアのクリスティンとも重なるんだけど、アサギリの方がビジュアルはレベルアップしていると思う。髪のつやとか、1本1本のディティールが細かくなったので見ていて楽しい。
顔の描きこみがもっと多い方が私は好み。睫毛、まぶた、鼻とかが描かれていてほしかった。
特に鼻。顔の影のつきかたを見る限り鼻を意識しながら描かれているかと思うんだけど、黒い点ひとつでいいから鼻があればのっぺりした印象が薄かったんじゃないかと思う。
特にアサギリは見た目の大部分を占める髪がかなり綺麗に描かれていたから、シンプルすぎる顔がちょっとイマイチに感じた。
とはいえ立ち絵がのっぺしているだけでスチルかなり綺麗だった(横顔が多く、鼻問題が解決しているのもある)ので、そこまで大きいマイナスではないです。
グラで言うと実験体の帽子が取れて脳みそが見えたシーンはめちゃくちゃ怖かった。
内臓や血があるわけでもないけどグロテスクなシーンではあると思う。絵面的にはアサギリが死んだ鏡夜を抱きしめているシーンの方がグロ(脳みそから出血しているので)だと思うんだけど、多分この作品の中で一番グロを感じるのは実験体だと思う。
●UI
文字送り速度とオート速度くらいしかいじっていないけど、必要なものは大体揃っているんじゃないでしょうか。
特に嬉しいだろうな~と思ったのは、文字送りをした時にボイスの再生を中断するか続けるかを選べること。
私は長台詞を聞くためだけに文字送りを待つのが好きじゃない・でもなるべくボイスは聞きたいので、ボイスを再生しつつ文字送りができるのは助かった。
地味に嬉しかったのは、バックログで表示されるテキストの行数が(制作会社が同じウォーターフェニックスのゲームと比較して)多かったこと。
最悪なる災厄人間に捧ぐ、アーキタイプ・アーカディアだと3行しか表示されなくて不便だったのでこれは助かった。
シーン回想はないけどセーブ枠はかなり多いので、各自セーブすれば良いんじゃないでしょうか。私は回想機能はほぼ使わないので問題なし。
●シナリオ
しょっぱなから謎に謎をぶちこまれて大混乱を誘われてから少しずつ納得が進んでいく話。
世界観(神は何者なのかとか具体的な戦争・鏡夜の身に何があったのか)はそこまで語られないので、そこはやや消化不良。ただ本筋は世界観設定になく、鏡夜とアサギリの交友にあるのでバッサリ切った感じなんだと思う。
ロープライスなDL専売ゲームとしてその辺を割り切ればクオリティは高い。
短いプレイ時間の中で途方もない時間が過ぎていて、中盤まではその途方もなさを自覚できないけど繰り返される「おはよう」などによってプレイヤーも感覚を追体験できる。
特に実験体との出会い~二人での再出発はかなり感情の動きが大きくてグッときた。
冒頭のアサギリが鏡夜に「顔」と言われて理解できず「音が出ている場所」と言われて理解できたのも、「顔」を知らなかったんじゃなくて鏡夜に顔がなかったのか!!という驚きもあって良かった。
↑この缶詰のシーンはプレイしただけだとよくわからなかった。
とりあえずスクショだけ撮っておこうと思って残していたけど、エンディングまで見ても謎だった。
これは設定資料集で理解できました(後述)
起こっている話の流れは不自然ではなく、そのぶんある程度は予想がつくんだけどアサギリの健気で不憫なところとか鏡夜がしっかりアサギリを想っている(アサギリの死に慣れてしまうことへの自戒も含め)ところがあって、愛着が湧くから泣きどころでしっかり泣いてしまう。
アーキタイプ・アーカディアでも思ったけど時間のかかる努力をしているシーンの描写がうまいんだよな。冗長ってほどでもないんだけど、ある程度ちゃんと時間が経過していると分かる。
星を教えるアサギリが可愛かった。
「わんぴーす星(ぼし)」みたいな言い方で我々からすると馴染みのある「~座」を知らないんだなと分かるのも良いし、原始宗教とかでも星は出てくるからアサギリが注目したのが星なのもとても良かった。
最後、鏡夜が死ぬ段になって「1分後に」って言うのは逆に残酷じゃない? と思ったんだけど、アサギリの視点になった時に意味が分かるのがかなり面白かった。
これは鏡夜がアサギリと共に死を経験したからこそ出来たことなんですよね。本来は無駄で、二人の関係を一時的にこじらせただけに見えた死の共有が最後の最後にアサギリを救って良かった。
スタッフロールはアサギリが一人で歩いているシーンばかりなのに妙に新鮮味があるな~と思ったら植物…! そして水……!!
これまでの歩みでアサギリが見てこなかったものを得たのは、これまでの殺風景な世界とのギャップもあってまた泣けてくる。
最後の最後はどういう意味だろう……どうとでも取って良さそうだけど、私はアサギリがちゃんと人として死んだ時、一瞬だけでも二人で手を取り合えたのかな~と思っています。
天国的なところがあればそこで、無いのだとしても消える寸前まで、二人は幸せだったんじゃないでしょうか。
●資料集を見て
クラウドファンディングのリターンは設定資料集+複製台本。
資料集はかなり読み応えがあって楽しいですね。
缶詰のシーンの解説もあって助かった。
そうか、缶詰を食べてから鏡夜が起きるまでが相当時間があったのか!! ここも伏線だったのね……。
あとはエンドロールが何なのかも納得した。
神様は人間の償いが終わるまで、一度地球の命を止めたのね。そして終わったから、水から命の営みを始めたのかな。
エンドロールの参考テキスト(あくまで参考)だと、あの後もアサギリはだいぶ生きたんですね。
個人的には普通の人間として普通に老いて死んでほしかった気もするけど、まあ雨が降る程度の大地だったら即死ものだし命がある地球をアサギリが見てくれたのはめちゃくちゃ嬉しい。
座談会とかはゆっくり読みます。
良い話だったしとにかくお勧め。シナリオも短く分岐も少ないし、ここしばらくゲームから離れていた人にもぜひ遊んで欲しいです。