【感想】席には限りがございます! ~トラックに轢かれてチート能力を手に入れた私たちは異世界転移を目指して殺し合います~
「席には限りがございます! ~トラックに轢かれてチート能力を手に入れた私たちは異世界転移を目指して殺し合います~」 感想です。
全編のネタバレあり。
本編は読了、小ネタ集未読、作者の方のTwitterは見たり見なかったり、ブログは読んでる。完結後のブログは未読。
いわゆる小説投稿サイトに連載されている作品を読み切ったのは本作が初な気がする。めでたいですね。
本作を読むきっかけは、なんかのタイミングで作者の方のブログを見付けて興味を持ったこと。過去作は未読。
詳しくない人間の偏見になるけど、小説投稿サイトは玉石混交のイメージが強い。
特に今回は作者から作品に入った流れなので、文章がイマイチだったせいで作者への好意が幻滅に変わったらイヤだな~~と思っていたんだけど、結果的に面白く読めて良かったです。
個人的に最高だったのは、花梨がエグめのシスコンだったこと。姉を好きすぎる妹が好きすぎるので嬉しかった。
あとは能力バトルもので見たい「本来想定されていない能力の使い方」の使い方も好き。
切華さんの「小指を切って創造」で収めるかと思いきや、終盤で花梨の蘇生が活きてくるのがかなり好き。しかも穏乃の再行動に使うだけじゃなく、切華を現実に引き戻す手として最後の最後でも使ってくるのが本当に強い。
意表をつかれたシーンを挙げると、姫裏が花梨側につかずに病院を出たところと、撫子に加速をかけてから決着がつくまでの流れ。
最終的な転移者がどうなるか分からなくて混乱し続けられたのは嬉しかった。「自殺は良くない、現実で頑張って生きよう!」みたいなメッセージもなく、双子が片割れだけ転移成功するのも意外性があって良い感じ。
自分たちが生活している世界でデスゲームをやるとなると、学校・仕事はどうしたら…あたりの問題が出てくる(授業中の襲撃はそれはそれで美味しい)んだけど、今回はそのへんの非能力者とのコミュニケーション等を「全員自殺したので」で済ませるパワープレイで良かった。
女神のキャラ付けとか、どうでもいいところはかなりテンプレ的に済ませているので、いらないところで脳みそを使う余地がなくて良かったですね。AAも個人的には森絵都「カラフル」のプラプラに近いイメージ(あっちはもっと感情が出るけど)で好き。
物語としては群像劇に近く、冒頭が花梨から始まるから花梨が主人公かと思いきやそんなことはない。
というか花梨陣営は姫裏を解放してから最終局面までほぼ動きが無かったので、そのバランス取りで序盤が花梨視点だった感じだな…と思いました。話の良し悪しには影響なし。
なんで理李の髪が伸びてる? みたいな細かい違和感もちゃんと理由があり、各人が姉かどうかなどの伏線の細かさが気持ち良い。
好みだったのは灯・小百合・穏乃。
特に灯さんが良い……罪を自覚している異常者(小児性愛者)で、自分のエゴのために妥協せず自殺できるところが好き。
灯さんは過去エピソードもつらくて良い。ギリギリ一線を超えなかっただけの人で、灯の内面を知れる読者としては擁護したいけど作品世界の人間としては非難したいところが良いバランスで大好きになった。
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これは私の問題だけど、discordでルールの共有等がされているのは納得感が薄い。
私がディスコまったく使わないのもあり、なんでわざわざdiscordを使うんだよ感はあった。
とはいえ作品を大きく毀損するものでもないし、discordのことをほぼ知らなくても問題なく読めたので、納得感は薄かったけど特別な欠点だとも思っていないです。
作者の方のTwitterに、涼&穏乃の組み合わせが魔法少女育成計画のウィンタープリズン&シスターナナのカウンターみたいなものになっている旨のツイートがあってウケた。あっちもあっちで不健全だったけどこっちは輪をかけて不健全でナイス。
思った以上に良い作品だったので満足。同じ作者の過去作も読んでみたいですね。