映画「シン・仮面ライダー」の感想です。
ネタバレのない範囲で言うと、怪異バトルものとして普通に面白かった。
好みに合わなかった部分もあるけども大きいマイナス要素は特にない。
思ったより血が出るし生々しいのでそこはビックリした。でもその怖さも含めて本作の大事な要素だったんじゃないかな~。
以下ネタバレあり。
特典は本郷とハチオーグ(怪人態)。本郷嬉しい!
私の「仮面ライダー」と「庵野監督の作品」の前提知識はこんな感じ。
仮面ライダー:アギト・クウガ・ゼロワン・リバイス・ギーツ(現行)は視聴。
初代ライダーは未視聴で「藤岡弘、が出る・二号ライダーがいる・バッタ・ショッカーの力と仮面ライダーの力は同じもの」くらいの知識量。話の筋や展開は知らない。
庵野監督の作品:テレビ版と映画版のエヴァ全部、シン・ゴジラ、シン・ウルトラマンは視聴。それ以外は未視聴で何があるのかも含め情報は持っていない。
冒頭、人間を撲殺する仮面ライダーに、力のおぞましさみたいなのがしっかり出ていてかなり良かった。
崖の上から登場する仮面ライダーに古いSEが入るのはちょっとウケたけど、初代のリメイクということで懐古趣味が入ることは理解していたので特に問題なし。
そういう懐古趣味のひとつなんだろうけど、ライダーの宙返りが全編通して多すぎてそこは飽きた。ただ初代が好きな方からすればあれが良いんだろうから、これは私の適性のなさが問題かもしれない。
序盤のクモオーグVS本郷のバトルのクモオーグがメチャクチャ格好良くて好み。キザったらしい余裕の回避が好き……ていうか脚長いな!
コウモリオーグは顔が気持ち悪くてアップになるたびにイヤ~~~~(HAPPY)と思った。イヤなんだけどこのイヤさが良い。バトル的にはあまり印象は残っていない。
サソリオーグ・ハチオーグあたりはやや退屈な感じはした。
どちらもトドメが人によるもので拍子抜けしたのと、キャラクターの造形がイマイチに感じたんだと思う。
クモ・コウモリ・カマキリ・チョウと比べてキャラクターっぽすぎるのが気になったのかもしれない。
うまく言語化できないけど、性格・服装・言動・戦い方とかの一貫性を感じなかった。
サソリオーグについては彼女の中身の描写がほぼないので良いんだけど、その直後に登場するハチオーグの一貫性が薄く見えたのでサソリオーグもまとめて気になったのかも。
ハチオーグは和装で、刀が得物で、拠点は洋風で、ワインを嗜んで、スーツの男をはべらせて……という感じで和洋折衷されているんだけど、和洋折衷が好きな人(オーグ)というよりはちぐはぐな人に見えた。
ちぐはぐな人として描写されているのだとしても好きじゃないな……とも思う。
あとは特定の口癖を持つキャラクターが女性に偏っていて、そこが気になったのかも。
ルリ子の「私は用意周到なの」、ハチオーグの「あらら」に対して、その他のキャラクターには口癖がない。
この辺もあって女性キャラはテンプレート化されている感があり、悪印象に繋がった。
ここで気持ちが冷めたのもあり、カマキリ(カメレオン)オーグとの戦いもあまり気持ちは乗らなかった。
○血液描写
PG12って血液あのくらいならいいんだ!?
赤黒い血がしっかり映るのでギョッとした。
これもコウモリオーグの顔面と同じ「イヤだけどあった方が映画としては良い」タイプの描写だと思う。
本作は本郷がずっと殺人に苦悩しているので、ライダーVSオーグでありつつ殺人でもあることが示されているようでとても良かった。それはそれとして血が映るとヒエ~~~とは思う。
○台詞回し
もともと懐古趣味の映画なんだから……とは思うものの、気になるには気になる。
コウモリオーグ戦でのルリ子の「ぎっちょん」、ハチオーグの「あらら」とか、やや不自然な台詞は気になる。初代の放映頃の設定なのか? と思いきやルリ子の「コミュ障」発言もあるので時代設定は少なくともゼロ年代以降っぽい。ゼロ年代以降でぎっちょん……言うか……?
ルリ子の台詞は全体的に庵野監督のご趣味って感じですね。過去の庵野監督作品でも観た(聞いた)感じがする。庵野監督の趣味であることに良い/悪いの判断はないよ。
○ルリ子が良い
美少女すぎる……。引きで全身が映ったシーンで腰の位置が高すぎてちょっとウケた。
ルリ子を演じた浜辺美波氏の容姿もあり、用意周到な研究者でありつつナイーブな少女らしい側面も見えてかなり魅力的だった。
「着替えの時もそばにいて」「あなたも着たきりの服を洗って」と言うシーンは恋愛によらない強い愛と信頼が感じられて気に入っている。
遺言映像でだけ見せる笑顔も愛らしくて好き。
○ルリ子死んだんだが!?
死ぬんか?!
映画を観てから初代を知っている方に話を聞いたところ、初代のルリ子は本郷が修行に旅立つと同時に去り、本郷が戻って来ても登場しなかったらしい。なるほどね。
序盤でクモオーグが泡になって死んだ時に「あなたも私も死ぬとこうなる」と言った時点でどちらから死ぬシーンがあるかも……とは思っていたけど、刺されてすぐは泡にならなかったのでここで死ぬとは思わなかった。
その後の泡になったシーンでの絶望感がすごい。とても良かった。
○チョウオーグ
ラスボスの方向性はゲンドウ……と少し思った。
玉座から離れる時に接続が切れるような描写があってすごく好き。
ラストの政府関係者も多分ライダーファン的には嬉しい名前なんだろうな~という感じですね。
以下、その他の思ったことなど。
・シンゴジラ、シンウルトラマンは政治劇もあったけど本作はそういうのがなかったですね(政治関係者はいたけど)。だから何という話ではある
・ケイの声がめっちゃ梅原裕一郎……と思ったけど松坂桃李氏だったらしい。いい声の方ですね。
・スタッフロールでワイン指導みたいなスタッフがいてウケた。まさかハチオーグのあのワンシーンのためだけに!? 映画って色んな人が関わって作っているんですね。
・Twitterで「庵野監督の性癖に殴られるような作品」みたいな物言いを見かけたけど的外れだと思う。確かにヘキ・趣味・嗜好は多く含まれているけど、あくまで商業作品として、仮面ライダーに触れてこなかった人にも向けられた作品として作られていると感じた。……けどもこういう物言いをする方の多くが特撮を好む方なので、私が拾いきれていなかった過去作への熱情みたいなものが存在したのかもしれない。