るーむ私記

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【感想】映画マルドゥック・スクランブル:原作旧版を丁寧に踏襲した良作。唯一のネックは視聴経路の少なさか

映画マルドゥック・スクランブル<圧縮><燃焼><排気>の感想です。
基本的に原作旧版と同一の内容で、原作ファンもこれにはニッコリ。映像だとカジノシーンはさすがに分かりにくい気がするもののその程度。

映画としてもお勧めではあるけど、各種サブスクにない+中古も状態が良いものはプレミア化しているので視聴のハードルが高い点は問題か。マルドゥックシリーズに手を出すなら、原作完全版を読むのが一番手っ取り早いとは思う。

 

以下ネタバレあり。ストーリーは原作通りなので、物語や登場人物についての言及は少なめ。

●総評:突き詰めた原作通り。旧版ベースなので畜産業者まわりはカット

私は原作マルドゥックシリーズのファンで、マルドゥック劇場版は製作発表の時から楽しみにしていた。
震災や冲方丁氏の逮捕など、色々あって視聴の機会を逸していたのだけど、ある時<圧縮>の限定版が手に入ったので<燃焼><排気>も入手。


↑<圧縮>入手の喜びに体調を崩している

ストーリーラインは原作とまったく同じ。バロットとシェル、シェルと母のセックスも描写はあるし序盤のトイレ盗撮シーンもある。
原作者・冲方丁氏のブログ(ぶらりずむ黙契録・2023年現在は過去の投稿は非公開)でも、映画用に台詞を変えた脚本を提供したら「原作と違う」ということで没になった話もあった通り、原作の台詞から増えたものも減ったものも記憶の限りは思い当たらない。さすがに原作と照らし合わせれば色々あるとは思うんだけど、明らかな違いはない。

2010年刊行の完全版ではなく2003年刊行の旧版ベースで作られている都合、畜産業者の過去描写はナシ。完全版で明かされた彼らの背景は、その後の彼らの歪み方も含めて人間味を感じるシーンなのでこれが無いのは惜しいものの、原作通りであるゆえの欠点しかなく、劇場版に直したことで起こった過不足がないのは驚き。

●キャラクター:長髪ボイルドが当時は新鮮だったんですよ

老害オタクの回顧録いいっすか?いいよ!

マルドゥック・スクランブルの映像化は2005年に一度頓挫していて、2009年くらいに今回の劇場版が告知されている。告知は2008年か?まあいいでしょう。私が冲方丁にハマったのは2008年です。「聲の形」「不滅のあなたへ」の作者である大今良時氏によるコミカライズ発表時には既にスクランブル&ヴェロシティを読んでいたので、私は2008~2009年くらいからのファン。ファンになった2008年前後の時期はマルドゥックの公式イラストは原作表紙絵しかなかった。それ以外の人物は作中描写以外に情報がなく、ファンが妄想で各々の世界を描いていたわけですよ。

そんな視覚情報ゼロの状態で、はじめに予告映像が現れた。


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15年近く前のことなので厳密な時系列は曖昧ですが、劇場版公式サイトでもメインキャラの設定画が公開され、公式の彼らの姿が明らかになった。

当時はTwitterがギリなかった(あったけどユーザーが少なかった)ので、ファン間でのコミュニケーションは主に2ちゃんねるだったわけです。
設定画の公開への反応は人それぞれだったけど、イメージぴったり!って声はそんなに多くなかった気がする。
ログも取っていないROMの曖昧な記憶で言うと「ボイルドは短髪だと思っていた」「街並みがチャイナ風なのが意外」が多かったと思う。あとは当時はセルアニメが主流だったのでCGアニメであることへの不安の声も散見されたはず。

私もおおむね同意見で、ボイルドは元軍人なんだし短髪が良かったよぉ~!!とは思った。とはいえイメージが崩れるというほどでもなく、重力<フロート>描写を考えると長髪が良いのは分かるしロングコートは完全解釈一致。


加えてそれ以外の人物はイメージからのブレを全然感じなかった。私はキャラクターの容姿を想像することがほぼなく、ブレも何もイメージが無かったのもあるんだけど、ぱっと見で「違う」とならなかったのは嬉しい。
特に好きなデザインはシェル。原作を読んでいる時は最悪な男ですね…と思っていたけど、予告映像でのカメレオングラスを掛けたアップを見た時ちょっとときめいた。ディーラーとして人前に立つ職業なのもあって顔が良いんだよな……この流れでシェルの声優である中井和哉氏のことも好きになった。

●声優:ウフコック役の八嶋智人氏が本当にウフコック

バロット役の林原めぐみ氏を筆頭にベテラン揃いなので安定している。ミディアム・ザ・フィンガーネイルが若本すぎて面白くなっちゃうなど個人の問題はあるものの、聞き苦しいと感じることは一度もない。

ベテラン声優揃いの中でウフコック役が八嶋智人氏なのが目を惹く。
そしてCV八嶋智人氏のウフコックは包容力と愛らしさが同居していて安心感が強い。特に<圧縮>の「ネズミはお嫌いじゃありませんか?」、<燃焼>でバロットの謝罪を受けての「俺は大丈夫だ」は、予告映像に使われているのもあって何度も聞いては惚れ惚れしている。


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●アクション:少ないながらも存分に魅せてくれる

<圧縮>を観た時、こんなにアクション少なかったっけ!?とは思った。ただ、原作完全版・漫画版では畜産業者との戦闘中に彼らの過去が明かされるから尺が増えているだけで、原作無印と比べるとまったく同じなんだよな。個人的にはレア・ザ・ヘアとのナイフの切っ先をぶつけ合うシーンが好き。
<圧縮>終盤~<燃焼>冒頭の、バロットを守るために殻化するウフコックは原作でもお気に入りのシーンだったので完全再現されていて嬉しい。

●観てくださいとは言いづらいけど、観て損はないと断言はできる

サブスク配信ナシ&円盤の入手難易度を考えると、気軽に観てとは言えない!!

ただ、原作ファンとしては一切不満のない出来。カジノシーンは安定の分かりにくさ+予想以上の長さだけど、それも含め原作通りなので文句はないです。
入手まわりの問題はあるものの、自信を持ってオススメしたい。