以下ネタバレ
クリア、本編+暴露モードはヒントコーナーを含めすべて読んで、バッドエンドも全回収。
エクストラは未読。ギャグテイストっぽいので私には不要かな~という感じです。
プレイ時間としては長めだけど思ったほど長くはなかった。私にとっての長いアドベンチャーゲームの比較対象が最悪なる災厄人間に捧ぐなのが悪い。あれと比べれば大抵の長編ゲームは短い。
キャラクターボイスが最悪という以外に目立った欠点はなさそう。
千枝実ルートである黄泉の途中からボイス全ミュートしたので、李花子さんのつちぐも独白とか春ちゃんのかみさま声とかも聴いていなくてちょっと心残りではある。ただそれまでの時点でこのゲームにおけるボイスへの信頼をすべて失ったので、聞き直すつもりはないです。
システムの整備も十分。アプリ版だと下から上のフリックでログ、下から上のフリックでテキストウィンドウが消せるので操作しやすい。バックログの時もフリックで戻りたかったけどさすがにそれは難しいか。この辺は便利だったけど説明がなかったのがちょっと寂しいところ。
終盤の世界観は納得できる人とできない人が半々かもしれない。作中でも指摘された通り「あんなことまでするか?」という疑問が湧けば微妙だろうし、「あんなことまでするか? と思われるからこそあんなことまで出来る」と思えるなら別に良しというか。私は後者。
どちらかといえば陽明の正体の方が納得できていない…けどまあこれは個人的なことで、作品の瑕疵ではなく私と作品の相性が悪い感じがする。
めー子と美辻は何だったのかとも思うものの、ケムコの他作品との絡みっぽいのであまり気にしないでおく。本筋の存在じゃないオーラが凄いもんな。
最悪なる災厄人間に捧ぐはウォーターフェニックスとの共同開発なので、ケムコのADVをプレイするのはこれが初めて。
そのため暴露モードも初めて使いましたが、これは実に楽しい。
チャートから暴露モードがある部分だけ拾い読みしたけど、指名手配の張り紙は狼じじいか!
そして配役決定の通知で知らない人がいると思ったら狼じじい、だけどそれすら彼の本名じゃないのが彼の悪賢さって感じで大好きだった。
以下、作品のプレイ順序に沿った感想。
◎黄泉ルート
そういえば千枝実との宅飲み中の選択肢は「目覚めが悪い」以外選んでいない。台詞程度とはいえちょっとした分岐になっていそうだから選んでも良かったかも。余談ですが初プレイ時は「犯罪~」を選んだら一発で殺されると思っていました。
この辺の千枝実とのやり取りはプレイ当初は性的な危うさしか感じていなかったけど今思い返すと他の部分でも危うい
便所泊のあたりは暴露モードの狼じじいの狼藉が見れて大変楽しい。
逃げようとするとうまくいかないのは麻酔ガス的なもの→三車によって殺害 とみて良いのだろうか。
ラスト、暴露モードでめー子がやられたんじゃなくてめー子がやらかしたんだと判明した時はちょっと面白かった。彼女が何者なのかは分からずじまいだけども、まあ本筋ではなさそうなので諦めます。
ラスト、千枝実の湿疹と腐敗はどういう事情かと思ったけど、単純に李花子から離れたので雑処理されたということで良さそう。
◎機知ルート
ここのルート名の意味がいまいち理解できていない。李花子のことを指しているのだろうか。
黄泉・機知・暗黒をルート単体で見たとき、ゲームとして一番楽しかったのはこのルート。へびとして占い先を選べるのは楽しい。
暴露モードだと李花子さんが結構ちゃんと宴のセオリーに則って動いていてよかった。
ルール見落としかもしれないけど、この宴においてはくもが自分を守るのはアリなんだろうか。私が彼女だったら宴の間に私視点で確定おおかみの陽明を活かすように立ち回りつつ、自分は噛まれないように自分を守ろうとするなあ、と思いました。
へび対抗で出ると噛まれて終わるのも面白かったし、二日目で調べる対象の選択肢が4つも出るのもドキドキした。
チャートを見返していると、これは1回目で匠さんを調べなかった時の救済措置でもあるんですね。2回目の方が選択肢が増えているのはおそろしいことですが…。
ちなみに初回の占い先は匠さん→モッチーだったので、2回目でモッチーおおかみが出た時はものすごく嬉しかった。意気揚々と開示してモッチーを吊ったのに噛まれた時は意味が分からなくて焦りましたが…。
ここも人狼ゲームを知っていて、あとから俯瞰すると面白いんですうよね。対抗COせず、黒出しもできていない状態で出るのが不思議な感じはする。
この後の選択肢が素直なのは面白いところ。バッドエンド回収で李花子さんを吊ったら意味不明なタイミングで終わったので驚いた。てっきり普通に進行していってひと勝ちだけど一番守りたかった人は…みたいな終わりになると思っていた。
ただまあ最後まで見ると当然なんですよね。この瞬間終わらなかった理由も暴露で回収されているので満足。
最後の話し合いの流れはバッドエンドも通常エンドも大好き。
バッドエンドは暴露だと千枝実が切ないんだよな…「愛しながら死ぬ」「すてき」の間に考えていたこととか、春ちゃんへの気持ちを抱えているモッチーとか、抒情的にとにかく好き。
通常エンドの最後、一人吊って一人は手足を切る判断をしたところだけちょっと気にしている。
彼は作中で語られた通りの人間だけど、もっとこの辺に納得のできるエピソードが欲しかったなあ。暴露モードでそういう本を書いたことがあるからスッと出てきたとか、その程度でいいんだけども。
このエンディングは色々とモヤるけどトゥルーではないからこれで良いのか…? などと思っていたらしっかりバッドエンドでしたね。
このエンドは清さんが本当に可哀相で…人間的に難があるとはいえ、あそこまでの業を背負う人間ではないのに…。しかし不意打ちでも匠さんあたりを殺せたのは本当にすごいな。やればできるの体現者。
◎暗黒ルート
陽明がおおかみだったのは予想通り、そしてかおりさんと共闘できるのが地味に嬉しいところ。
春ちゃんルートかな、とは薄々思っていたので春ちゃんがおおかみ陣営なのも予想通り…ただ、どちらかといえばむじなだと思っていたので嬉しい誤算。むじながめー子なのは嬉しくない誤算。ただ暴露のめー子にむじな任命するのはかなり微笑ましかった。おじちゃん頑張ったね!
「あ、武器ないんですね…」みたいなモタモタ感が面白かった。仕損じても三車がなんとかしてくれるから、あんな感じでも何とかなったんだろうなあ。
運が良かったのか暗黒ルートの選択肢はストレートに正解だけを引き続けたので、バッドエンドそのものの回収は暴露モードでやりました。
やっぱりおおかみ側はかなり綱渡りですね。通常の人狼ゲームにはない「陽明はどの立場でも死んではならない」が縛りとしてだいぶ厄介。
あとは噛み選択肢モッチー・橋本さん・泰長の選択肢のかおりさんには痺れた…そこからのかおりさん・春さんの対立構造もお見事。あれやられたらひとの勝ち目はかなり薄い。
「おおかみ勝利を目指す」のバッドエンドは面白かった。素直に人狼で負けたー! って感じでむしろスッキリする。暴露ルートだとギャグエンドなのも良い。
ラストで春の詐病と分かるけど、それにしてもおかしくない? と思っていたらしっかりかみさまがいてくれて安心。モッチーの「大きくなってえっちな感じになっている(意訳)」は面白かった。
千枝実=をち返り能力持ち にこの時点で気づけた私は偉い。
◎KEY集め
「遥か遠い光」ENDはかなり好き。私としてはこっちを千枝実エンドとしたいくらい。
「陽明・千枝実の死=巻き戻り条件」ではないと気付くシーンはゾクっとした。プレイヤーの目線で油断していた。
このタイミングで「ループ発動者が内部にいるとしたら李花子・めー子のどちらか」までは見当がついたけど、どちらでもないだろうから誰だ…? と思ってしまっていた。
陽明が作業的に自死を選ぶところはかなり抵抗がある。情報収集と割り切ってすぐ死ぬことが、というよりも、陽明がそうする=プレイヤーがそうさせることへのペナルティ的なものが欲しかった。
神話ルートに入ってからは一本道にしなければいけないのでそこからの分岐は作れず、そうなると「また巻き戻ろうと飛び降りるが、落ちている最中にもう後がないことに気づく」みたいなエンドは不可能。
ただ、暗黒エンドが一番暗く、この辺とかも明るいというか単なる情報収集パートでしかなく面白みが薄いので、せっかくだし陽明の死亡を克明に書くとか何かもっと暗い気持ちになれるものが欲しかった。
◎神話ルート
あまり言うことがないなあ…一本道だからね。
突如出てきた旅館の人のキャラが無駄に濃くて少々不愉快だったけど、あとの部分はまっすぐ熱い。
李花子さんが怪しいというのは全然気づかなかった。神託の時にいなかった時も「なんか裏工作などをしている」くらいにしか思っていなかった。
狼じじいには罰を受けてほしかった気もあるけど、司法で裁いたところでというのもあるし、めー子がなんとなくで作った罠で死ぬくらいでいいのかもしれない。
まあ黄泉・機知・暗黒いずれも望まない死は遂げているわけなのでそれで良しとするしかないですね。
馬宮さんの攻略雑か~~~!? と思ったけど、確かに序盤「ええと、すみません」だし暴露だとテンション爆上がりしてるからすごいな。シュー缶の話題もそういう事情だったのね。
正しさを振り払ったからといって千枝実があんなにすぐにスッキリできるわけないと思っているので、そこはなんか…フィクションだから仕方ないと諦めるしかない場所だろうか。
このシナリオでまさかこんなに人が死なない、まんまるに大団円ができるとは思っていなかったのでそういう意味では衝撃のラストだった。人死にが最低限のゲーム、かなりスッキリした気分になるので良い。
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「そもそも事件が起きなければ良い」系の話は「出会わなければ良かった」に繋がることで物悲しいラストになることが多いのだけど、本作の場合それでは事件が起こってしまうというのが面白いポイントだと思いました。
陽明が主人公として強いのはある。頭の回転だけで言うと橋本さんが作中最強っぽいけど、橋本さんは自分、良くても久子までしか命を勘定に入れないから、ループ保持者になると色々厳しそう。
「出会わなければ良かった」みたいな無に還るオチは安直といえば安直だから、そこに逃げなかったこのエンディングはとても好み。
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キャラについては千枝実が一番好き。
かおりさんはかなり好きなんだけど変遷の中で見せた顔が好きなだけで、熱海旅行を終えて日常に帰ってきたかおりさんには特に興味がない。
モッチーも良いキャラ。彼が主人公のSF(すこしふしぎ)な短編集が読みたいな。
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謎の解き明かしや感情の移ろいを安易な形ではなく克明に書いていて、そこがとても美しい作品。
村の因習にどっぷり浸かれて素晴らしい体験でした。
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最近はADVづいているところがあるので、次は同じケムコから出ている「デスマッチラブコメ!」にいこうかな~。
こっちは死ぬ&ループ&ラブコメで、ポップに死ねそうでそれはそれで楽しみ。
ただ一点気になっていることがあって、
これは……………………。