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【漫画】友だちの話(河原和音原作、山川あいじ画) 感想

 漫画「友だちの話(河原和音原作、山川あいじ画)」の感想です(ネタバレ含)


 若かりし頃は別冊マーガレットを読んでいました。
 しかし気付けば読まなくなり、本屋に行っても少女漫画コーナーを見なくなっていたのですが、ふとこれが目に留まり購入。

 河原和音さんというと、「先生!」や「高校デビュー」。
 今は「俺物語!!」の原作もやられているようで、今は原作中心に活動されているのでしょうか。
 作画の山川あいじさんは存じ上げない……と思ったら、「アニマニアル」の方でしたか。他の作品もwikipediaでタイトルを見ていると分からないのですが、実は読んだことがありそうです。

●友だちの話
 可愛い親友・もえが自慢の英子。
 もえは英子が大好きで、告白を「英子を大事にしてくれるなら」と言っては断る。
 しかし、そんなもえに彼氏・土田が出来て――というのが1話のあらすじ。

 元は読み切りを予定していたようで、全編読んでから1話に戻ると土田のキャラが、ん? という感じはちょっとありました。
 ただ、鳴神くんが土田大好き(友人として)なので、鳴神視点の土田と英子視点の土田が違うのは致し方ないのかなとも思います。

 英子ともえ、鳴神と土田は互いを大事に思っています。
 大事だから、彼氏を作って幸せになって欲しい英子。
 大事だから、親友を大切にしてくれる彼氏じゃなきゃ欲しくないもえ。
 大事だから、親友を傷付けた女を許さない鳴神。
(土田視点のストーリーはないので土田は省略)

 小中高校生向けの少女漫画において、「共感できるか」は凄く大事な要素だと思っています。
 その意味で、本作は素晴らしかった。英子・もえ・鳴神・土田、どのキャラの言い分もまっとうで、やりすぎた・いきすぎた行動も自然になるようになっている。
 2話は鳴神、最終話はもえ視点なので、特にこの2人の精神的な変化が顕著に感じられました。

 絵についても、キャラらしさがあって好き。
 巻末に河原さんの描かれた4キャラ・山川さんの描かれた服装設定があるのですが、もえの鞄が設定では「赤チェック」とありますが、表紙では「白地に取っ手等がピンク」に変わっているのですね。こういう微妙なチェンジが分かるので、設定書を見るのは楽しい。
 英子の造形が好きです。可愛い顔じゃないんだけど、不細工キャラってほど振りきれているわけでもない3枚目。私服も男受けは諦めている感じが実に良い。設定書の「自分が可愛くない分可愛い物が好き」がエピソードとして出ていたら…とは思いますが、さすがに全3話の中に収めるのはキツかったのかなーと思いました。

 私はガールズラブが好きなのですが、そういう面でも非常に美味しい作品。
 もえと英子は普通に友人同士で恋愛の芽生えはまったくないのですが、もえのモノローグ。

『だけど 私にはカレシだけはあげれない
 カレシといる しあわせとか
 結婚とか 子供産むとか
 そういう幸せは 私じゃ どうしても あげらんない』

 だから、鳴神が英子を好きなら――という風に心情は繋がっていきます。
 これってあれよね? もえが英子に恋愛的な充足をもたらせるなら彼氏なんて認めないってことだよね!?
 ……いや、もちろん恋と友情の充足は別なのでそういう風にはならないんだろうけど。
 でも、微かでも百合が香るなら、私はそれを見逃さない。

●その彼、調べます
 友人・みどりの彼氏が浮気してるらしいので追跡調査をすることになるが、なんか知らない人が絡んでくる、という読み切り。こちらも河原さんが原作。

 ストーリーとしてはそんなに面白くは感じませんでしたが、美和子の造形が可愛い。
 逆にみどりはなんかなぁ……ちょっと露悪的に描かれているからだとは思うのですが、キャラとして可愛い! とは思いませんでした。「あぁ……女子……」って思う。

 女子高生のリアル感は細かい所によく感じました。いや私女子高生じゃないからわかんないけどね??
 特に強く感じたのが2ヶ所、みどりの図々しいメール文面と、トモヤの「笑顔きてる!」がすごく最近っぽい! と思いました。

●総評
「その彼、調べます」は微妙でしたが、「友だちの話」は本当に面白い話でした。
 恋愛と友情で悩む作品は多くあるとはいえ、こういう形での懊悩もあるのか! とちょっと驚き。
「友だちの話」も元は1話読み切りだったのが土田のキャラの良さに続編が出来て……ということだったので、山川さんGJ! という感じ。
 そもそもどうして河原さんが漫画じゃなくて原作業なのかは少し気になったのですが、現在も連載2本(うち1本は原作のみ)を持っているようなので、その辺が理由なのでしょうか。
 原作という形ではあっても河原さんの作品がたくさん読めるのは嬉しいです。山川さんのキャラクターデザインも好きなので、過去作も読んでみたいところです。