プレイ進捗はバッドエンドも含め全クリ。スチル等も全て回収。
ストーリーとして、落としどころに納得できない部分は多々あるものの個々のエピソードとか感情の動きがとにかく良かった。
綺羅々ルートが好きだけど、好きと言ってはいけないような複雑な気持ちがある。
・BGM
セックス中のノイズがかった音楽がとにかく耳に残る。余韻があって好き。
本作、同意・正気のうえでのセックスが非常に少ないので、エロゲにありがちなセックスBGMから大きく外してきたところが嬉しい。
あとは超速スキップ時にひたすらガヤガヤしているのも、スキップ中の自分≒捨がじっとその場をやり過ごしているようなイメージが湧いて面白かった。
・グラフィック
背景の精緻さ、水やガラスの表現が綺麗で好き。
キャラデザの話にまで食い込むと、キャラの顔がそれぞれ「美少女」という単一な顔ではなく個性付けされているのが良かった。
みゆ・花椿・許斐が比較的普通の美少女っぽいビジュアルなのに対し、綺羅々はちょっと面長めで大人びていたり。
あとは胡頽子は他のヒロインと比べてやや不美人めというか。
不細工ではないけど、鼻の低さとか素の目は他キャラより小さい・風流の時は濃いメイク顔(ただし眉毛は黒)とか、その辺のリアリティがすごくある。
見た目だけで言うと花椿が好みなんだけど、デザインとして気に入ったのは綺羅々。
属性で綺羅々を語るならギャル・カースト上位・いじめっ子という感じなんだけど、綺羅々のデザインは現代のリアル・ギャルからは離れたところにある。
ただ、これも町が田舎で、現代のトレンドから少し離れている…という表現のひとつなのかなーという感じがする。
何よりモジカ能力の発露演出が良い。
序盤、壁ドンされたみゆの周囲にブワッと出てくる思念が、フォントの美しさもあって怖かった。確かにこれは俯いて生きることしか出来なくなりそう…。
テキストが画面中央に1行表示なのは確かに面食らうし見づらさもあるけど、演出上必要だったのかな~という気がしているので否定派ではないです。
・各ルート感想
好きなルートとしては花椿=綺羅々>みゆ>胡頽子=許斐。
許斐ルートがなんかちょっとうまく理解できずにハマれなかった。詳細は該当ルートで。
・花椿
許斐ルートと対になっているというか、このやり方ではコンセイ様には勝てないよ、という意味では許斐ルートのバッドとも言えるのかもしれない。
ただ、ストーリー的には一番エロゲらしいと感じられて良かった。普通のエロゲが好きな人間がなんでニトロプラスに行くんですかねぇ…。
幻覚の中であるとしても、花椿の横顔キスシーンとその後の行為は綺麗だった。
・綺羅々
このルートが好きだと言うの、リョナ性癖がある人間みたいで結構嫌だな。
一本のシナリオをひとつの物語として見るなら、綺羅々ルートとみゆルートがクオリティが高い気がする。
胡頽子・花椿は伏線張りという感があるのと、許斐ルートはこれまでの全ルートの統括なので、単体で見て良いというものではないという意味。許斐ルートは最後にプレイするものとして位置づけられているので、そうあるべきではあるんだけども。
捨と綺羅々、二人の心の動きがよく見えるから好きという面もある。
許斐ルートを例外と置くなら、このルートが唯一ヒロインと恋愛的に結ばれているルートなんですよね。結ばれたのは捨と綺羅々じゃなくて、ビーくんと綺羅々なわけだけど。
綺羅々はビーくんの死から逃避して捨をビーくんだと思い込むし、捨もそんな綺羅々に付き合ううちに自分のことをビーくんだと思い込むしで割とどうかしちゃっていても、描写が丁寧だから超展開感は薄い。
……好きなのはシナリオの流れであって、「エロ」ゲーとしては最悪ですけどね!!!
確かにこのシナリオをエロ抜きの全年齢で出したら良さ八割減って感じだからエロゲである綺羅々ルートが好きなわけだけど、セックスシーンは全部嫌い…嫌いというか嫌というか興奮しないというか二度とプレイしたくないというか(オタク特有の早口)
綺羅々が可哀そうすぎてそういう目では見れない。
もちろん綺羅々は悪党だし、「九鬼組の娘じゃなくてアタシを…」みたいな気持ちがあったとしても、共通ルート内(そして作品開始以前の時間軸)でやったことは罰を受けるべきことだと思う。
そういう意味で捨の作中での放送室~逃走までの凶行に納得はしているんだけど、それはそれとして捨の行為は許されないものであるべきだと思う。
もちろんエンディング後の捨は相応の罰を受けるはずだけど。
嘔吐物、鼻水、キメセクとろくなセックスがなかったのも可哀想といえば可哀想。
ただ、旅館に戻った捨を出迎える時の「うォォ!!!」みたいな悲鳴の声はとても良かった。痛々しいほど痩せた姿も込みで好き。
ラスト、九鬼組の介入に笑子が噛んでいるのはあの町のバランスを捨が破壊してしまったから、ということで良いのだろうか。
千枚通しの話はしません。思い出しただけで体調がおかしくなる………………。
あんなにモザイクまみれなのに、なんならビーくんの画像の方がよほどグロなのに、千枚通し突き刺しの方がつらかったよ…。
・みゆルート
最初に通ったルート。なるべくしてなったルートなのでこれといって感想が浮かばない。「そうなるしかない」ルートだったけど、終盤の捨の気持ちが一途で、「純愛やんけ…」と思いました。
実際、やっていることが凄惨でいじめテーマだからアレだけど、みゆの気持ちを読み切ったうえでみゆの望みを叶える捨には母性というか、性を超えた愛を感じる部分があった。
・胡頽子ルート
これもエロゲっぽいシナリオ…いやエロゲに詳しくないから良く分からないです。ただ、私のイメージするエロゲというものの枠の中にある内容。
何よりも声優さんの演技が凄すぎ。
胡頽子としての素のボソボソしたオタク喋り・風流としての作り声・風流としての喘ぎ声・胡頽子としての喘ぎと使い分けがすさまじい。
女オタクあるある:喘ぐ時はアニメ声 というのがあると思っているんだけど、それが表現されていて満足してしまった。
ただラスト、笑子の指示が下った理由がよく分からなかった。
サイキックの勢力が増して九鬼組とのバランスを壊したから、ということ? 祭を破壊してしまったからで良いのかな?
確かに祭りがなければ許斐の計画は達成できないから、予定が繰延になって翌年以降のマグイ祭で許斐の計画は行われるのかな。捨がいないから失敗して白部屋コースだろうか。
・許斐ルート
このルートは情報が多くて忙しいんだけど、笑子=許斐ひとり で良いということだろうか。
それにしては持っている情報が多すぎる気がしていて微妙。
タブレットのハックをして情報を得ている、とするのは良いんだけど、ひとりで処理しきれる情報量ではなさそうなのでそこはどうなんだろうなぁ。許斐はスーパー美少女生徒会長だから大丈夫なんだろうか。
ルートとしては、これまでの全ルートを統括するかのように全ヒロインを手籠めにしていくところに許斐の恐ろしさが出ていて良かった。
その行為に至った許斐の動機についてはあまり納得はできなかったとはいえ流れは痛々しいながらも良かったし、ラストのコンセイ様とのセックスバトル(???)もこのゲームのカラーとはうってかわった熱さがあって面白かった。
ただ、最後の落としどころに納得出来ていない。
・気になっていること
ラスト、2人は樹望町を出て新たな旅に出るわけだけど、これはハッピーではないことだよな。
まったく何の解決もしていないよなあ、という気持ちが強くある。
プレイ中に私が気にしていたのは「捨の醜さにどう落としどころをつけるのか」という点。
もっと細かい話をすると、「捨がなぜ醜いのか」「捨は自身の醜さに対してどう行動するのか」が消化不良。
捨の醜さについては近親相姦の子だからということで良いっぽいけど、許斐は容姿が普通かむしろ良いくらいなのに捨だけ醜い理由がよく分からなかった。
ただ許斐ルート終盤の自分の集中力が結構途絶えてきていたのもあるので、もう一度やってみたら何か発見があるのかもしれないです。
どちらかといえば後者、「捨は自身の醜さに対してどう行動するのか」の方が気になっている。
ラスト、モジカ能力も捨の容姿も変わることはなかったわけだから、場所を移っても捨が他人からの嫌悪や罵声を浴びながら生きていくことに変わりはない。
捨自身がそれを気にしないのだとしても、捨(そして運命共同体である許斐)の前に困難は何度も降りかかってくると思う。
だとしたら、2人が幸せになれる道はどこにもないのでは? ということが気になっている。
樹望町や父の支配から逃れたことに意味が見いだせなかった。
とはいえ、捨も許斐も意味があることをしたかったわけではないのかもしれないけど。
序盤で捨が目的とした復讐にも、感情論以外の意味はまったくないわけだから、合理的な意味を求める方がおかしいのかもしれない。
このあたりの「捨が自分の醜さをどうするか」にアンサーが出ている白部屋実験エンドの方が私としてはしっくりきた。
感想としては以上。
笑子とかコンセイ様まわりがあまり気持ちにフィットしなかったのが微妙だったのかも。
とはいえ完全主人公視点のモジカ演出はすごく好きになったので、もっと違う形で見てみたかった。