るーむ私記

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【感想】FATAL TWELVE


FATAL TWELVEの感想です。

 デスゲームものなんだけどグロテスクさや残酷さは薄く、どちらかといえば心情に寄り添った描写が目立つ作品。
 途中から凛火のラブストーリーの側面も出てくるので、そういう意味でも少女漫画っぽい雰囲気が漂っている。

 頭脳戦や肉弾戦もあるんだけど、それだけに偏らないストーリーだったことが好き。
 ボイスのクオリティが全体的に低いことを除けば大満足。

 デスゲームは好きだけど残酷・グロテスクすぎるのは嫌って人にかなりお勧め。
 凛火らを中心とした各キャラクターたちのジュブナイル小説っぽい読み方も出来ると思う。広くプレイされて欲しい名作だと思う。

 以下、印象に残っていることなど。ネタバレあり。FATAL TWELVE_20220108140705


●世界観が特に良い

 デスゲームの残酷さを極限まで削ぎ落とした物語だと思っている。

 デスゲームのプレイヤーたちは既に死んでおり歴史改変によって生かされている状態なので、デスゲームに敗北して死のペナルティを得る形ではなく、デスゲームに勝利すると生のボーナスが得られる方向になっているので良かった。
 更に、プレイヤーたちの死そのものは本当にただの偶然で、神や運命の力が関係ないところも好き。

 デスゲームは存在そのものが悪意の塊で最悪な中、ルールやシステムに傷つけたり苦しめたりするためだけの要素が少なかったところは良かった。

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●心情に寄り添ったうえでの戦いが見られる

 デスゲームが単純に殺し合いではなく、互いのカードを奪い合う形なのが良かった。

 ランダムに分けられたカードのうち、自分のカードを誰が持っているかとかどうやって相手の情報を引き出すかは情報戦になるし、暴力で情報を引き出す人もいる。ただ、引き出すべき情報は名前・死因・未練とどこか情緒を感じるもので、未練に触れる以上その人の内面を理解する必要があることも良かった。

 ちゃんと命ある人間を書いている、という雰囲気が全編にわたってあるところが特に気に入った。
 デスゲームといえば冒頭で脱落する噛ませ犬的なキャラクターがほぼ間違いなく出てきて、本作ではチャン・チャンがそれにあたる。
 チャンは脱落時点では本当にただの哀れな第一被害者くらいにしか見えないんだけど、その後アランの回想・凛火の覚悟の中で人物像が浮き上がってくるところがかなり良かった。
 プレイヤーから見て人間であることが理解できるだけじゃなく、凛火がちゃんと人間性を受け取ってくれるのも良かったんだと思う。

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 公式サイトでも、12人それぞれの役の方のインタビューが掲載されているのは尊重の姿勢があって良かった。
 これは単純に、インタビューの有無でメタ的にメインキャラが誰かを推測させない狙いもある気はしますが……。

●ストーリー

 ここも心情・エモに寄った内容で良かった。

 凛火の性格もあり、他人の感情を無視して生きるでもなく自分を犠牲にするでもなく、両軸で揺れ続けるのが良かった。

 大筋となるデスゲームとは別に「海晴の本当の名前は何なのか」「凛火の未練は何なのか」などの細かい謎が散りばめられている点も楽しかった。

 心情心情とやたら繰り返してはいるけど、オデットあたりがバトルを担っているので、シーンとしては少ないけどアクション方面の見応えも用意はされている。

 ストーリーで特に良かったのは、牛塚さん周辺と終盤の海晴との関係をどうするか…というあたり。

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 牛塚さんは良くも悪くもありふれたおじいさんで、デスゲームの状況下でどういう態度を取るか分からないのが怖かった。ずっとドキドキしていた気がする。
 あとは牛塚さんを発端に中盤は話が動いたので、そのきっかけになった牛塚さんは印象深い。

 終盤の海晴はねーーーー私最初に告白を受けちゃってバッドエンドに行ったから本当につらかったんですよ……。そういう思い出が強く残っている。

 本作、選択肢は多いけどバッド直行はスケールさんとの会話の中と終盤の海晴との色々に集まっていて、この人たちは本当に難しいんだなって感じがして好き。

 公式サイトでも「恋愛の成就を目的とした恋愛アドベンチャーではない」とあるけど、本当にその通りでそこが良かった。
 細かいことだけど、凛火と海晴の関係をどうするのかの時に、同性であることがほぼ言及されなかったのはかなり嬉しかった。一応言及がないわけではないんだけど、凛火が悩んでいる時に「同性とかを気にしてるわけじゃないんだけど……」みたいな言い方で、同性だから何みたいな言い方をしてくる第三者がいなかったのはかなり嬉しいポイント。

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●システム

 特に気になるところはなし。普通に欲しいものは全部ある感じ。

 ADVは一本道で、即バッドエンドの選択肢と好感度の変動が起こる選択肢がどちらもある模様。
 好感度はマスクデータなので、誰に対してどのくらいとかは不明。序盤で好感度不足によるバッドエンド(厳密には、好感度不足により選択肢が出現しなくなる)を一度見たけど、他に好感度による判定があったかどうかは不明。

 好感度システムって徐々に廃れている印象があるので、今好感度システムがあって具体的な数値が見られないゲームを遊ぶとかなり緊張しますね。

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●グラフィック

 多少クセは感じるけどクオリティは高い。
 個人的にはオデットがデザイン好き。しっかり腹筋が割れているのも、過度のつり目で攻撃的な表情も好き。

 女の子がメインで出てくるゲーム、メインの女の子を魅力的に描けることが第一条件になりすぎてそれ以外(老人や筋肉隆々のキャラ、動物、無機物など)は画力がイマイチで……というのがありがちなんだけど、本作は全然そんなこともなくて良かった。アランとオデットの体の厚みとか、フェデリーコのヘロヘロな体とか。あとは牛塚さんも顔ごとちゃんと更けている(普通に顔を描いて皺を足しただけでなく)だったのが良かった。

 スチルもしっかり力が入っていて、ひまわり館で凛火が飲み物を準備するグラフィックも背景がしっかり描きこまれている+準備する飲み物によって差分が細かいとか、気合を感じて好き。

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 あまり良くなかったところ。
 これは大きく2つで、海晴視点のテキストの質が低いことと、声優の演技があまり良くなかったこと。

●海晴視点のテキストの質が低い

 屈折した環境で生きる頭の良いキャラクターなので、海晴視点での文章が難しいのは分かるんだけどそれにしてもイマイチ。
 頭が良い文章を作ろうとこねくり回してるうちに主語と述語その他がねじれた意味不明文になっていたので、読んでいてかなり苛立った。

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 凛火や他の人物視点だとそこまでおかしな印象は受けなかったから、海晴を書く! ということで気合が入りすぎた結果だとは思うんだけど……幸いなのは海晴視点のパートが短く、下手なテキストを読む時間がそこまで長くないことか。

●声優の演技があまり良くない

 全体的にイマイチで、中でも突出して良くない人が散見される感じ。
 結論だけ先に書くと、基本はディレクションの問題だと思っています。

 まず全体的に早口、というかボソボソした喋りの人が多い。口の中で声がこもっている。予算に制約があったり規模が小さいゲームだとこういうボイスが増えるので、本作もこのタイプかー……とはちょっと思った。

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 桂子さん、アランあたりがボソボソした声に該当。リアルっぽい喋りの追求なのかな~とも思うんだけど、口調の特徴づけやいわゆるアニメ声の人物もいるのでそれは違う気がする。

 このキャラクターに対する声優と演技にベストが尽くされていると感じられなかった。もっと合う声優や演技があるのではないかと思える。
「声の演技がすごい」みたいなシーンが一切なかったことが気になっているのかもしれない。

 特に悪かったのは桂子さんと海晴。

 桂子さんは喋りがとにかく早い。早すぎる。聞き取れないわけではないし、リアルの人間の喋りだとしたら不自然ではない速度だけど、ゲームのキャラクターの台詞としては早すぎる。
 あまりにも気になったので声優の森中葵さんを軽く調べたりサンプルボイスを聴いたところ、サンプルボイスも軒並み早かった。そういう方みたいです。

 桂子さんは病弱で大人しくて落ち着いた雰囲気の人だし、キャラクター性と早口が合っているとは思えなかった。

 海晴については1点、台詞中の「くすっ」を明確に言葉として発しているのが許せない。
 海晴の「くすっ」は文字起こしすると完璧に「くすっ」なんですよ。でも人間の笑い声って本来そうではなくて、「くすっ」と文中で表現される笑いももっと複雑な音が混ざっていて、あえて言葉として、笑い声だと分かるように平易な表現を選ぶなら「くすっ」になる程度のものだと思っている。なので「くすっ」という台詞を「くすっ」と発したことが本当に嫌だった。

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 海晴役の駒形友梨さんはアイドルマスターミリオンライブの高山紗代子も演じていて、紗代子の喋りで何か気になったことはないので海晴の喋りに関する問題はディレクションの問題だと断定しても良さそう。
 声優さんの演技が海晴を演じた時点ではあまり習熟していなくて、紗代子の時にはクオリティが上がったとする説も、紗代子役が2013年から、FATAL TWELVEの発売が2018年なことから否定できると思います。
※厳密には私は2017年サービスインのミリシタからしかプレイしていないけど、それでもミリシタで問題ないと感じるのでどのみち通用しない

 オデットの「カカッ(笑い声)」もやや不自然だったけどこれはギリギリ慣れるレベル。


 他にも声周りは細かい不満がいくつかあるけど、他はプレイしている間に慣れる程度。
 逆に女神パルカは演技も声質も合っていて良かったと思う。あとパルカも「くすっ」と笑うシーンがあるんだけど、こっちは問題ないんだよな……海晴、どうして……。
 桂子さんは出番が少ないから良いんだけど、海晴は最初から最後まで出ずっぱりでかなり愛着も湧くキャラクターなのに声があんなのだから悲しかった。



 不満はあるんだけどそれ以上にきめ細かな良い作品だったと思います。
 今のところPS4でしか出ていないのかな? 発売されてから日も経っていないし、Switchとかでもぜひ販売してほしい。

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