るーむ私記

プライベーーートなブログです

【感想】最悪なる災厄人間に捧ぐ

最悪なる災厄人間に捧ぐ の感想です
全編のネタバレあり
クリア状況は「最悪に捧ぐ」、エンドリストも含め全てクリア。

●ストーリー・世界観
 シナリオとしては丁寧なつくりだったと思います。
 伏線の回収もちゃんとあって、虐待・いじめ・自殺という現実にある重いテーマの扱いも不快感は少なく、解決までの道のりがきちんと書かれていたのが良かったです。
 あとは豆乳世界が声をかけなかった場合の分岐と、それがもたらした結果がすごくよかった。
 途中(キナコ死亡)くらいまでプレイした辺りで、この作品の円満なエンドって難しくない? という気持ちはあった。災厄世界をなんとかする、お母さんをなんとかする、豹馬とクロの透明をなんとかする、と「解決」すべき問題が多かったので、これはどこかに不満が残るやつ…と思っていた。
 ただ、それも本編で大体が、「最悪へ捧ぐ」でほぼすべてが解消されて良かった。

・最悪へ捧ぐ
 最後、出会わなかったクロのターンで気になっていたことの回収はほとんどこっちでしたね。
 あのタイミングで忘れたのは「お母さん」のことだから、ということですね。豹馬が死んだのかと思ったらそうじゃなくてよかった。
 エサを食事と呼ぶようになっていたり、劣等感もかなり拭われていたり…と解決しているのはなぜ? と思っていたらこっちで答え合わせがありました。豹馬子ちゃんはすごいなあ!
 ちなみに本編ラスト、クロが豹馬を見つけても豹馬には見えないじゃん…と思っていたけど、見えなくて聞こえなくても別にいいのか。あの豹馬は豆乳世界からの持ち越しだから、「なにか」とのコミュニケーションの術があるし、(あの時点までの)クロのことなら大体把握してますもんね。

 そしてそれと並行して書かれるのがリーダーのヤバさ。
 首輪の件が解決しないまま幸せな世界を迎えている、というのはやっぱり危険だったんですね。そう考えると最後のクロが最適解なんだという感じがする。
 エンディング1(豹馬が78歳まで生きるエンディング)も幸せじゃないの? とは思ったんですが、あれも豹馬が死亡→クロ自殺で、関係性として歪だからバッド扱いという解釈なんですよね。
 リーダーは怖かった…でもかわいい…。

 ストーリーとして不満はほぼないんですが、根底にある世界観だけは大いに不満。
 自殺すると扉が…というのは別にどうでもいいんだけど、創造主と石板の存在が、作品を回すために存在しているだけのような気がして意味が感じられなかった。
 あと創造主についても、この存在がなんらかの宗教的意味を持って作られたわけでもなく、「そういうもの」と呼ぶには扱いが弱すぎる。
 それに伴ってABCさんも意味が薄かったんじゃないかな? という気持ちはある。逆に途中からまったく出なくなる××くん、△△ちゃんあたりにはそうした印象がないんですよね。

●キャラクター
 基本的にクロと豹馬しかいないので、特にクロを気に入るかどうかにかかっている…けど、萌えとか二次元キャラがそもそも駄目、というのでもない限りはその心配はないんじゃなかろうか。
 グラフィック的にクロしか見えないのでクロ以外のキャラ(ほぼ存在しないわけだけど)に好感を抱くことがないような仕組みになってるんですよね。他女キャラといえば母親、高校生の時の隣の席の子、だいずやのおばちゃんくらいだからギャルゲ的攻略キャラとして見るとやっぱりクロしかいない。
 被虐待児童でリーダーを筆頭にヤンデレの気配を微妙に漂わせているので、「重さ」が気になる人はいるかもしれない。私はそういう子大好きですね!

 豹馬はクロ大好きでウザさは感じなくもないけど、正直その辺までくると災厄世界の方が気になるし災厄世界が気になるなら鮮血ビューティフォーに持って行かれちゃったので豹馬についても気になるところはないです。
 癖のあるキャラではあるけど、それも含めて好き。

 クロしか出てこないとは言ってもクロはいっぱい出てくるわけで、じゃあどのクロが一番好きなの? というのは悩ましいところ。
 正直言って選べない…ソフトクリーム分岐のクロ(作中の5名)とその他とだったら前者が断然、というところまでしか選べない。
 プレイしていて、今一緒にいるクロが好きになってしまう。
 豆腐の時は「変な癖もないこのクロが一番普通に育った場合のクロに近いんだからこの子が一番だ」、キナコは「ジト目可愛い…思いやりに満ちていてそれでいてツンクロはこの子が唯一…一番だ」みたいな感じで、その時にいるクロが一番かわいかった。
 みそ・豆乳については正直そこまで…と思っていたけどみそは強さと脆さの共存が泣けるし、豆乳は包容力がすごい。海のスチルの破壊力よ…何気に豆乳クロって胸大きくない? 気のせい?
 という感じで、どのクロが好きとかじゃなくてクロが好きです。

 リーダーについては本編中ではそこまで、というよりキャラのブレが気になっていた(私だけの神様とか言うくせに普通では? という意味で)けど、最悪へ捧ぐでその辺の謎も解消されたので良かった。
 ただ、リーダーは好きとか好きじゃないというか本当に特別なクロなので、他のクロとの比較もしないでおきたいというのが正直なところですね。ヤンデレかわいい。

●グラフィック
 発売は2018年だけど、2018年における流行からはちょっと外れたような絵柄。
 クロ自体が6歳~16歳なので絵柄というか登場するキャラの問題という気もするけど、印象としては幼め。
(聞こえる分は)フルボイスだけど、それに対して立ち絵が足りなかったかなーという気持ちはちょっとある。あとは最近のADV事情を知らないけど、目パチ口パクがないのはちょっと気になった。
 スチル系は全部良かった、特に最悪へ捧ぐのリーダーの表情の病みっぷりが良かったんだけど、立ち絵だと幼クロの服が気になる。
 最初に着てたやつじゃなくて試着室イベントのアレ。塗りがのっぺりしすぎというか、そこだけ浮きすぎてません? 作中で目にする時間は短いから別にいいけど、それにしてもお粗末な印象がぬぐえない。

●ボイス
 小鳥遊ゆめさんがすべてのクロを担当。
 声優さん存じ上げないので調べたけど公式HPとかTwitterとか全然出てこないので何も分からない。
 クロの声の熱演と演じ分けはもちろんすごかったんだけど、印象に残っているのはと言われるとクロではなく「死ね」かな。
 本作はボイスの再生が終了する前に頁送りすると、次のボイス再生までそのボイスの再生が中断されない仕様なので、豹馬のいじめ回想だとほぼずっと「しーね、しーね」がリフレインされる最悪の状態になる。
 辛かったけどそれが追体験になって没入できた感じもある。
 豹馬自身の声を聞くことは少ないので、そういう意味でも本編ラスト「  」とか、最悪へ捧ぐは貴重。男声には興味がないんですが、ちょっと高めの声で聞きやすかったです。

●音楽
 メニュー画面の音楽は印象的だった。
 TRUEのスタッフロールでも流れたので身構えたんですが、どんどん明るくなっていったので安心した。
 あとは災厄のBGMとか日常BGMとか好き…プレイ時間が長いゲームだから全体的に思い入れがあります。

●システム・UI
 一本道にたまにバッドエンドがある感じで、フラグ管理は一切ない。
 バッドエンド選択をしてから割とすぐバッドエンドに行くので、そういう意味でも面倒はなかったです。
 オート時の頁送りも丁度いい感じ。バックログが1画面に2ページ分と少なかったかな、という感じはするけど視認性を考えるとこのくらいかもしれない。
 プレイしていて不便なところはなかったので、特に言いたいことはないです。

●総評
 定価3000円でこれがプレイできるのはさすがに嘘でしょ…。
 中古市場だともっと安く出回っていることもあるようですが、プレイして緊張することも多いけど楽しかった。
 世界観が煩雑だけど説明も丁寧なので、ヤンデレ風の被虐待ヒロインとすぐ自殺する主人公が嫌いでなければぜひプレイして欲しい作品でした。