るーむ私記

プライベーーートなブログです

【感想】嫌いなら呼ぶなよ(綿矢りさ)、倒産続きの彼女(新川帆立)、電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました。(伊藤聡)



 最近読んだ本の感想です。

・嫌いなら呼ぶなよ(綿矢りさ):氏の書く女性の一人称小説だ~~い好き!!栄養にならない超うまいスナック菓子みたいな本

・倒産続きの彼女(新川帆立):初の剣持シリーズ。思ったよりハードボイルドだった。恋愛要素が少なくてハッピー。

・電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました。(伊藤聡):noteの内容をもっと深く詳しくといった雰囲気。「女性ならでは」とされた部分にやや違和感はあるけど勉強になる

 以下もっとくわしい感想。

・嫌いなら呼ぶなよ(綿矢りさ

 綿矢りさについては「好きなんだけど違和感がすごい」印象が強い。
「手のひらの京」で描かれたいけず文化・ツーショ禁止とか、暮らしている文化圏が全然違う人なんだろうな~~という感じ。と思ったら「生のみ生のままで」では異質さがちゃんと異質なものとして出てくるので、まったく理解できないわけでもないけど理解が及ばない部分が多く、難しい気持ちでいる。



 基本的に氏の本は好きなので全部読むことにはしていて、それはそうと短編集はハズレ率が高いイメージがあった。
「意識のリボン」に収録の短編が全部ハズレ(私にとって)だったのが大きい。とはいえ「憤死」における表題作は天才そのもので、若い女性の露悪しぐさがうまい人なんだろうという気持ちはあり、本書はタイトルも表紙も帯の情報も若い女性の露悪しぐさに満ちているのでかなり期待が持てた。

 期待通り、本作はかなり良かった。
 特に良かったのは神田タ。しっこが黄色い話をして終わる短編、何!? でもあのラスト一文じゃないとキまらないので大正解だし超天才。
 眼帯のミニーマウスも良かった。物語の質的な良さはこの短編から一番強く感じた。私はなるべく作者のパーソナルは見ない方なので、氏の人となりはあまり知らないんだけど、Twitterにも結構精通している方なんだな~と思いました。
 嫌いなら呼ぶなよ、老は害で若も輩は好みではないけど面白い、程度。なんにせよ神田タのぽやんちゃんの「ゆっくり喋ってれば癒し系っぽくなる」と思って「ほえ~」とか言うところがめちゃくちゃ好きです……軽んじられてるだろうけど別にいい、と思える強さも好き。

・倒産続きの彼女(新川帆立)


 初めての剣持麗子シリーズ、というか剣持麗子シリーズというものがあるのね?
 本書だけ読むと剣持麗子さんは登場人物の一人にすぎないので、登場人物の恋愛模様がほぼ動かなかったのは、本書が剣持麗子が主人公のシリーズのサブキャラメイン回だからだったのかもしれませんね。

 シリーズの知識もなく、本の表紙とタイトルだけ見てなんとなく買ったので、本の内容は「勤務する会社がめっちゃ倒産する女性が出てくる」だけで弁護士が主人公なことも本を読んでからやっと知った。
 ましてや殺人が起きるとは。

 合コン、祖母の結婚、それに対して自分は……という所から話が始まるので、ミクロな話を進めていくのかと思っていたので殺人が発生して本気でビビった。そういう話なの!?
 人は死ぬし不審なことはあるしミステリやサスペンスの要素もありつつ、あくまでお仕事小説の範疇に収まる話なのが良かった。

 おそらく本書は剣持麗子シリーズの中では傍流なのだろうけど、そのおかげか恋愛要素が薄めで嬉しかった。
 お仕事小説系のシリーズは巻を重ねて恋愛色が強くなりすぎるてドロップアウトすることが多いので、同シリーズの作品が同じくらいのノリだったらまた読みたいです。

・電車の窓に映った自分が死んだ父に見えた日、スキンケアはじめました。(伊藤聡)


 ジャンルとしてはエッセイだろうか。

 基本的にはnoteの内容に肉付けしたような感じ。内容として明確に書き下ろされているのは美容雑誌についてかな。個人的には導入美容液についてのnote記事が好きだったので本でも読みたかったけどこちらは収録なし(導入美容液への言及はあり)。
 しかしギターのエフェクターとスキンケア用品の対比は図も加えてあり、noteをわざわざ開かずに読めるメリットは遥かに大きい。
 話をスキンケアに絞っていて、メイクの話をしない点も男性目線では読みやすいんじゃないでしょうか。

 面白かったのが、スキンケアや美容雑誌で語られる謎用語への眼差し。
 私はスキンケア最低限・メイクほぼしない女性で、ファッション誌は年に2回くらい読むけど美容雑誌はまったく読んだことがない。それでも「長さ出し」「うるちゅる」「モーヴピンク」が何なのかは分かる。氏が分からないことが不思議というより、自分が分かっていることが謎だなと思った。ネイルもまったくしないのになんで「長さ出し」は分かるんだ。
 美容における謎用語で「乳液仮面返し」が気に入っているので出てこないかな~と期待したけどなかった。もう言わないのかな。
 あとLDKって化粧品の本も出してるよな、と再発見してちょっと面白かった。LDKコストコと家電のイメージが強いんだよな。

 性別による差異は描かれるけど優劣に言及しないのは良かった……とは思ったものの、差異に関する言及に違和感はあった。

 話の枝葉の部分だけど「全プレ・差分」については、女性独自の造語ではないと思う。全プレはコロコロコミックなどの少年向け雑誌でもやるし、差分もアドベンチャーゲームで出る表現。2.5次元舞台が誕生する前から、男性向けアダルトゲームの紹介では「スチル○枚・差分込みで○枚の大ボリューム!」みたいな謳い方はしていたので、「差分」を女性独自の造語とするのは違和感がある。
 別にコロコロコミックが「全プレ」の、男性向けアダルトゲームが「差分」の発祥と言いたいわけではなく、少なくとも女性独自の造語ではないという話です。ここは気になった。

 付録が多い点も女性ならではか? と思ったけど、確かに筋トレ系の雑誌でプロテインが付録になってるのって見たことはないのでこれは女性独自の文化なのかも。

 とりあえず本の中で取り上げられていたデパコスの洗顔は気になる。今も毛穴ケア系の製品は使っているんだけど、やっぱりドラッグストアで買うものとは違うんだろうか。
 本書の元になったnoteに触発されて半年前から肌ラボの白潤プレミアムを使うようになり肌環境が改善した身としては、こうして読めてとても嬉しい。
 あと美容家やインスタグラマーでない立場から勧められる化粧品ってかなりグッとくるな……こうしてナノインフルエンサーって生まれるのか……みたいな気持ちになりました。Twitterでの化粧品(スキンケア用品)の紹介も眺めて楽しく過ごしているよ。