るーむ私記

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【感想】シカトリス:アプデで不満点はおおむね解決、主人公への好感度が高い良作

 シカトリス 感想です。

 

 6ループ目でクリア。

 

 トータルで言うと遊んで良かった。世界観・ループ設定が好きで、体験版で2Dイラストのクオリティの低さが許容できるならお勧め。

 

 公式HPでは「RPG」として紹介されているものの、ノベルゲームに本格的なRPGがついている感じのゲーム。
 ループの仕様上、RPG部分は作業感があるかも。とはいえシナリオは王道の成長もので、ループや異能まわりの設定も特に違和感はない。ゲーム的な難点はほぼアプデで改善されて遊びやすくなった。

 

 ゲーム部分に多少の文句があって、クリアして感想書く時は文句も言うぞ~!と思っていたのにアプデで難点がほぼすべて潰されちゃった。すばらしいことです。

 

 以下ネタバレあり。

 

ゲーム全体を通して:RPG要素はやや薄め、ループ周回に飽きない工夫は十分◎

 より具体的に言うと、ノベルゲームに育成シミュレーションとRPGがついている形、がもっとも近い。

 

 シナリオ内に選択肢はなく、主人公=神谷はプレイヤーの代替ではなく過去を持つ個人として造形されている。なのでプレイヤーがゲームのシナリオに介入できる部分は少なく、アドベンチャーゲームというよりはノベルゲームに近い形。

 

 平日は生徒たちに授業をするので、ここが育成シミュレーションにあたる。
 生徒の元から持つ各ステータスの伸び率等はS~Dのランクで示される。クリア後は素養のランダム化ができるものの、クリア前まではおおむねその素養に従って専攻(ジョブ)を選び育成する感じになると思う。

 シミュレーションパート中に発生する日常イベントは内容がランダム。5周目でも初めて見るイベントがあったので、イベント数はそれなりにある模様。

未読が多い

 

世界観・ストーリー:異能の不遇が描かれていて好き

 異能持ちの社会的地位が低い、という状況はかなり好みだった。

 プレイ日記の中でも書いたけど、異能持ちの能力は社会に溶け込むうえでそんなに便利じゃない上、異常異能のリスクを孕む。能力の利便性より危険性が上回るので、能力の発現=ある種の社会的な死 となっているのが好みだった。

 ストーリーの主軸は異能事件絡みで、サブ軸としてあるRAUT小隊をはじめとした異能持ちたちの進路についての言及もある。
 サブ軸である彼らの将来についてはかなり気になる部分だったので、作中で言及があり、エンディングでも一旦の解決が綴られているのは非常に良かった。

 

 シナリオが短いとか駆け足ってことはないはずなんだけど、分量的に物足りなさは感じた。
 無駄が少なすぎるのかも。最終盤の生徒たちの記憶を保持した状態でのループ後は戦って決着ついたらエンディング、の流れで、もうちょっと【完成】した状態を見たかった気持ちはある。

 

 とはいえ【完成】を見せられても完全に蛇足だしそういうことをやっている場合ではないので、これで良かったことは理解しています。

 

シミュレーションパート:複雑ではあるけど分からなくても楽しい

 各生徒の専攻を決めて、週ごとの授業を決める感じ。FE風花雪月に少し近いかも。

 専攻は初期セットはある+キャラクターの方向性を考えると大体似た方向にはなる。
 とはいえ選択の楽しみはあって、特殊系・属性系・無属性のどれを取るか・特に永宮は破識と虚識どっちを伸ばすかでプレイスタイルが出る。もっと言うとクリア後の初期ステータスランダム化でかなり遊べるので、あまり考えたくない人(私)は初期専攻から順張りで伸ばせばいいし、複雑に遊びたい人は初期ステータスランダム化して頑張ればいい、というのがあって良い。

 

 週ごとの授業も画面が異常にゴチャゴチャしているので面食らうけど、脳死でスキルが手に入る授業に振るくらいの考えでも支障なし。

 日本一ソフトウェアあるある:異常にゴチャついたゲーム画面ですが、最初はノリで選んでいたけどゲームへの理解が進むと目に入るものが増えるのでそこは楽しい。
 特に面白いのが、生徒ごとに授業の得意科目/苦手科目があり、苦手科目を生徒間でサポートできる仕組みがあること。なので授業を組む時は「得意・苦手の補い合いができるか」「伸ばしたいステータスか」「スキルは手に入るか」などを考える必要があり、ゲームに慣れてくるとそれが楽しい。

 

 複雑すぎてめんどくさい面もあるにはあるんだけど、教育改善でシャッフル・絶好調・集中講座を取ればカバーはできるので、深く考えずに楽しみたければその辺を駆使すればストレスは溜まらない。私的にはかなり良かった。
 あとは公式も複雑さ・めんどくささは自覚しているらしく公式Tipsがかなり充実しているので、それを見ると理解しやすいと思う。

 

バトル:歯ごたえ強め

 メインストーリー(事件&CUAD)と、任意で受けられる戦闘訓練がある。
 とはいえ戦闘訓練は必ずプレイするのが前提っぽい難易度。

 戦闘訓練飛ばせないのがめんどくせ~~と思ったけどアプデで飛ばせるようになったらしいので特に言うことがないです。

 戦闘前に敵のステータスは部分的に見られる+見てからスキルセットが可能。アイテムだけどうしようもないけど、割と親切な方だと思う。
 バトル敗北時も特別なエンディングがある場合を除いて無限に再戦可能+その場でループしてリタイアも可能なので、苦労が水泡に帰す感は薄め。

 

 一番しんどかった戦闘は新道信会での皆月香都咲。
 自動発動を積めるだけ積むプレイスタイルだったので、攻撃して減った分のHPが反撃によってもりもり回復していって悶えた。

 

 バトルメッセージの文字が小さすぎて読めない件・戦闘中に敵の属性耐性をチェックする術がない件についてはアプデで解消されたので良かったです。

 

グラフィック:のっぺりとした画風で賛否は分かれる。スチルは文句なし

 体験版でも公式HPでも見てもらえれば分かるんだけど、イラストの質は低い。
 質が低いと感じる理由は2つあって、

 

・体格や顔立ちがある程度リアル寄りなので、いわゆる美少女ものやディスガイア的な造形をイメージしていると期待外れに思う
・線画のシンプルさ+衣服の塗りの皺のなさのせいで、のっぺりした印象がある

 

 前者については相性だからどうしようもなくて、後者はもっと何とか出来たんじゃないの?というところ。
 本作は3Dグラフィックがなく2Dイラストがずっと目に入るので、慣れるまではかなり違和感がある。というか3Dに起こす必要がない絵なんだからもっと描きこみが細かいタッチでも困らなかったのでは?

 

 服の皺感のなさをはじめとするのっぺり感は特に制服の時に強く、私服→隊服→スチルとマシになっていく。
 嫌な言い方をすると「見れる」イラストになるのは隊服とスチル。隊服はオーダーやスキルでアップになる都合もあってリッチにしたのかなと思っている。スチルは少ないけどそのぶん気合が入っていて、このリソースをもっと立ち絵にも……と思うと惜しくてならない。返り血を浴びる永宮さんがオススメです。

 バトル時がSDイラストになるのも好きではないけどこれは好みの問題かな。絵のクオリティとして低いわけではないと思う。

 ただ、バトル時のSDイラストに生徒ごとのバリエーションがないのは不満。
 状態異常/戦闘不能のイラストが分かりやすいんですが、全員ポーズが同じなんですよね。膝をついて片目を閉じる/うつぶせに倒れるだけで、個性がない。

 

 たとえば永宮さんは病弱で体が動かないことに慣れているから状態異常時も思ったより平気そう・または過去を思い出して青ざめるとか、外見にコンプレックスがある音羽さんが顔を覆うとか、バリエーションがあれば見ていて楽しかっただろうな~とは思う。

 

 エネミーグラフィックの質が高いのがまた生徒立ち絵の貧しさを伝える。
 エネミーはデザインも異形感があってかなり好き!タッチ的にも近いので、同社のルフラン/ガレリアのエネミーを描いた方だろうか。

 皆月香都咲をはじめとした人間の敵も多く、立ち絵・エネミーグラフィックを交互に見ると誰だお前!?って感じがするので興覚めではある。ラスボスもこのパターンだしねえ……。

 もっと言うと主人公である神谷のグラが無なのは物足りなかった。
 あまりにも顔が出ないからシナリオ的に叙述トリック仕込んでるかと思っちゃった。1枚だけでいいんだけど、生徒とのオーダー時に神谷と生徒のカットインが入る演出とかあったら燃えたのにな~とは思う。

 

キャラクター:神谷への好感度がすごい

 個人的な好みで言うと、上城さん・音羽さんが好き。

 異能となったことによる悩みの軽重や真犯人との関わりに程度の差が出るので、メインストーリー内での存在感が強い・薄いはある。
 とはいえメインストーリーの事件的に関わりが薄い生徒のCUADが終盤に回ったり、序盤に精神面がおおむね解決する篠森さんもキャラクター的に終盤も存在感が損なわれていなかったりと、最大限の配慮は感じて良かった。

 

 何より主人公の神谷が主人公として好感が持てるヤツだったのがとにかく高評価。

 

 本作、男性主人公が高校生男女と同居するけど、エロ方向の話が一切ないんですよね。
 恋人ほしい・スタイルいいみたいな話があっても神谷は話題に参加しないし、モノローグ等で性欲を吐露することもない。これはかなり良いバランスで、ゲームをしていてよく行き当たるストレスがないことは高評価。

 

 この「エロ・お色気系描写の感じが肌に合う」ことによる好感はゲームだけじゃなくてそのゲームを作ったライターや会社にも及ぶので、他よりも大きい評価点になる。

 

 神谷の話に戻ると、感情の流れが丁寧に描写されていた+バックボーンの説明が十分なのでプレイヤー目線で理解しやすくて良い。目的・行動原理・行動そのものが道徳的に正しいので主人公強度が高くて良かったです。

 

 私はアイドルマスターSideMのオタクなので、神谷のCVが高塚智人(渡辺みのり役)だったのが特に嬉しかった。
 大人だけど若くて青くて熱血っぽさもあって、という感じで声も合っていたと思います。

 塁さんが本作のヒロインか? と思ったらあくまで神谷にとっての大切な人は雪乃さんで、塁さんはサブキャラに留まっていたのは良かった。
 しかし神谷のバックボーンや行動原理を強化すると考えると、雪乃さんの存在感がちょっと薄かった気はしている。大事だとは語られるし思い出描写もゼロではないんだけど、序盤に描かれて以降は名前しか出てこないので、ループを繰り返すうちにプレイヤーの記憶から薄れてしまう。
 大きい事件の後で雪乃さんを夢に見るシーンがあるとか、CUADの中で雪乃さんとの思い出を強めたりしたら、最後の雪乃さん救出のカタルシスももっと強かったのかもしれない。

 

良くなかった点:育て直しに若干の徒労感がある

 本作はループのたびに生徒たちのレベル・成長度が元に戻るので、積み上げていくことの面倒さは感じられる。
 本編クリア前は初期ステータスも常に一定なので、前周での方針に大きい不満がない場合、前周とだいたい同じことをやるので徒労感が強い。

 コスト無しで育て直しができるのはメリットではあるものの、育て直しをしたくない時もループで無に帰すわけなのでそこはダルくもある……せめてSランク勝利した戦闘はスキップできるようになりませんか?
 一応対処として、引き継ぎボーナスでLV+2と獲得経験値増加を取れば序盤のダルさは解消されるんだけど、欠点ではあると思う。

 

その他のトピックス

・季節でBGM・私服が変わるのは良かった。それにしても秋BGMがなんか優雅すぎてエロゲチックじゃなかった?
・用語集が即座に使われなくなったのにはウケた。固有の用語が出なくなったわけでもなく、新道進会も用語集に入っていなかったのに隊服の説明は入るあたりに序盤で力尽きた感があってキュートですね
・休日に生徒と外出する時、序盤は露骨に嫌がられるので悲しいね…と思った。夏くらいまでそんな感じなので、永宮お前恩を忘れたのか!?って感じがして面白い

 

まとめ

 良作。

 クリア後に楽しめるコンプ要素も少しあり、難易度も自在なのでユーザーの得意・不得意を問わず楽しめると思います。

 特定の生徒と仲を深める要素はなく、あくまで全員と平等に接する姿が個人的には好印象。

 日本一ソフトウェアのゲームとしては万人受けしそう。お勧めです。