るーむ私記

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【感想】ゴジラ-1.0

かなり好き。

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これまでに観たゴジラシン・ゴジラのみ。
シン・ゴジラを尖った作品とするなら本作は丸い作品というのが第一印象。万人受けしそうな雰囲気で、それが逆にイヤ!って思う人はいるかもな~と思いました。

以下ネタバレあり。

 

終わらない戦争を終わらせる話

話のメイン舞台は戦後すぐの日本ではあるものの、敷島個人が終戦に至るまでの物語でもあると思いました。
特攻隊員として死ぬはずだったのに機体故障を騙って生き延びて、ゴジラ襲来の時に島のみんなを見捨てて生き延びた敷島がゴジラと対峙する。夢の中にまで追いかけてきた戦争を終えるにはこれしかなく、1本の映画としてもひとつの物語としても美しい終わりで良かった。

戦争が終わっていないのは橘さんもそうで、他の面々も戦争を終えたなりにわだかまりを持っている。見ようと思わないと見えないくらいに漂うわだかまりが解放されていくのは観ていてとても気分が良かった。

敷島を筆頭に戦争の傷跡が克明で、水島の「あと数年長引いてくれたら」に胸倉をつかむ秋津は、まるごと見たことがあるレベルでベタなんだけどやっぱり欠かせない。

余談だけど本作は「スクリプトドクターの脚本教室」での解説された通りのストーリーラインなので、予習が活きた!!と思いちょっと嬉しかったです。

 

●気遣いの人間ドラマ

敷島と典子さんの恋模様を中心にした人情話要素。嫌いな人もいるだろうけど私はかなり好き。
典子さんは第一印象で「特撮・ロボものにありがちなエキセントリックヒロインか!?」と身構えたけどそうでもなく、順当に好感が持てる人だったので安心した。

想い合いつつも結婚はせず、内縁関係にもならずにただ同居している敷島&典子さんとヤキモキする周囲。ベタっちゃベタなんだけどこのくらいあった方が私は見やすかったです。
厳密に言うと「【好みの】恋愛要素があって良かった」。敷島&典子さんの関係性と周囲の振る舞いが好みだったから好印象だったけど、これが全然好みじゃない雰囲気だったら悪口を言っていた気がする。

これを観たのは2023年の私なので、作中の時代がどうあれジェンダー観は気になってしまうのだけど、その点でも気になることはなかった。
宅飲みで典子さんが食事の用意をしたり酌をしたりする(※水島には酌をしない)、澄子さんが育児を担う、マスコミに男性しかいないなどの点で引っかかる人はいるかも…とは思ったけど、典子さん・澄子さんがその役割を担ったのは女性だからってわけではないし、マスコミに男性しかいないのも時代柄で理解できるので、私的に引っ掛かりはなくて安心した。

一番泣けたのは作戦前夜、水島に「お前は船に乗せねえ」と言ったシーン。
水島が感じる疎外感も分かるんだけど、戦争経験者としては子どもを死地にやりたくないわけで……どちらかといえば親(秋津・野田)側に感情移入しちゃうんだけど、ここの水島の演技が凄く良くて泣いた。

ゴジラ大蹂躙

かなり早い段階でゴジラを出してくれるのでサービス精神を感じる。
大戸島蹂躙→銀座蹂躙→わだつみ作戦とそれぞれの出番で大暴れするし、特に銀座蹂躙シーンの絶望感は良かった。

ゴジラに詳しい人に話を聞いたところ、今回のようなビームの発射方法は初めてだったらしい。ビームもそうだけど引き戻しがあったのが特に良かった。アレに巻き込まれたら典子さん助かる目がないな、とハッキリ分かる感じ。まあ助かっていたけども。
電車に乗っていた典子さんが巻き込まれたのは、シン・ゴジラ無人在来線爆弾を念頭に置いた描写だろうか。

あとは水色の光! あれが出て尾~背中の突起が隆起しだすと最悪な目に遭うんだと分かっていても美しくてとても良かった。あれを見ている人々の顔も、絶望なのか見惚れているのか呆けているのか……という表情で好き。

●わだつみ作戦

作戦説明の質問で、敷島が確実な殺害にこだわっていたのが非常に良かった。
巨大な後悔にとらわれてゴジラ殺害に執心しているからとはいえ、作中でも異常者扱いを受けていて良い。ゴジラをどうにかすることは平和のために重要だけど、敷島にとっては自分の中で戦争を葬送することの方が重大で、その執着が表れているシーンとして胸に残っている。

軍、企業、などの集団も動いてはいるんだけど団体ではなく個人の強さに目が向く。
東洋バルーンの関係者が言う「我々も戦争上がりですよ」など、戦争経験者が持つ連帯がありつつ、水島を筆頭とした戦争に参加していない次世代の活躍も組み合わさっていて、最後の活躍シーンは非常に胸がすく思い。

わだつみ作戦中は敷島が完全に覚悟をキめており、真剣な真顔がとにかく格好良い。最後のパラシュートも、そうなるだろうと期待していた通りですごく嬉しかった。

知人のミリオタ的には震電が出たのが最高だったそうです。よかったねえ。

●ラストの謎

おい!クリフハンガー!!

典子さんのアザ? みたいなのが不穏不穏……これ以上敷島と典子さんに不幸になってほしくないんだが??
最初は髪の毛かなんかが変な風に見えてる? と思ったけどどんどんアップになるし何かの意味はあるんだろうな~~続編も作れそうな感じなので、続きがあるならぜひ観たい。

●その他

重巡高雄が来てくれた時の安心感がすごかった。あらすじや公式の宣伝もほぼ見ずに行ったので、敷島ここで退場したら泣いちゃうんだけど!? と思って怯えていた。敷島は退場しなかったけどラストで典子さんと再会した時に結局泣いちゃった。

・怪獣も戦艦も興味がないのでこの手の作品の説明パートは置いて行かれがちなんですが、艦これで艦船に親しんだおかげで海神作戦中の会話が多少理解できてよかった。

・秋津・野田・水島がとにかく良かったな。昭和の良い男たちって感じで好き。キャスティングの勝利感がすごい。

・エンドロールの役職を見て「スクリプターと字書きって何が違うんだろ…」とか考えるのが好き。ところで今回インターンが2名クレジットされてたんだけど、このインターンって大学生がやるインターン?だとしたら貴重な経験になりましたね。

・わだつみ作戦中に出てくる恰幅の良い若い男性がちょっと気になる。野田さんの「この国は人を大事にしていません(意訳)」の時におにぎりを持った彼が映るので、彼も彼で何かの傷跡がある人なのかもな~と思った。